研究課題
抽象的な概念を用いたカテゴリ認知は,ヒトの知的活動を支える基本的,かつ重要な認知機能である.しかし,カテゴリ認知における抽象化過程の神経メカニズムに関しては,適当な動物モデルが存在せず直接的な知見がない.そこで本実験では,3つの階層レベルを持つ自然カテゴリを自然画像とカテゴリ記号で構築し,カテゴリの抽象度を明示的に報告させる行動課題を作成しこの問題に取り組んだ.まず2頭のニホンザルに対し,3つの階層レベル(具体レベル,中間レベル,抽象レベル)を有する自然カテゴリが学習可能か検討した.1頭目のサルは全ての階層レベルに対しカテゴリ判別を学習した.さらに,習熟後における各階層の反応潜時を計測したところ,各階層レベルの中央値は具体レベルが576ms,中間レベルが492ms,抽象レベルが466msであり,3階層全ての群間で有意差があり,サルにおいてもヒトの行動実験と同様に抽象における抽象レベルの反応潜時が中間レベルの反応潜時よりも早いという結果が得られ, ヒトとサルにおいてカテゴリ認知処理の類似性が示唆された.2頭目のサルも抽象レベルと中間レベルのカテゴリ判別を習得した.以上からサルは階層構造を持つ自然カテゴリ体系を学習できることが示された.次に階層レベルを明示的に答える行動課題の訓練方法を確立し,訓練を進めた.同じ行動課題をヒトの被験者で行い,言葉による明示的な教示がなくてもカテゴリ階層構造をもとに正解を導けることがわかった.一頭のサルにはこれらの課題遂行中の脳活動を計測するために,皮質脳波電極を留置した.今後、サル認知行動課題の訓練を継続し、階層カテゴリ認知モデル系を完成し,脳活動計測を行い,脳内メカニズムの検証を進める.
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CEREBRAL CORTEX
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SCIENTIFIC REPORTS
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