測光電極は深部脳の神経組織から電気活動を記録すると同時に、蛍光の励起と記録を電極先端部の神経組織で行い、さらに脳深部で溶液の局所圧注入のできるパッチ電極である。深部脳の神経電気活動とCaを始めとする情報伝達物質動態の関連を明らかにする事を目的とした新しい電極法である。本年度の研究では(1)マウス海馬に遺伝子強制発現させたCa蛍光蛋白GCaMP6fをレポーターとして、海馬神経回路の働きを電気活動および細胞内Ca応答として明らかにした。これは金沢医科大学生理学教室で、小野宗範准教授、加藤伸郎教授との共同研究として行った。マウス海馬で自発活動および感覚刺激で賦活される電気活動および細胞内Ca信号を記録解析した。特に野生型マウスおよびアルツハイマーモデルマウス間で神経活動を比較する事で、認知行動異常に伴い起こる神経活動の違いを明らかにし、認知機能障害を細胞内情報伝達系の視点から解明する手がかりを得られた。(2)新しい研究手法としての応用も進んだ。これは久留米医大 中島則行講師、鷹野誠教授との共同研究であるが、測光電極信号の逐次分光計測法をマウス嗅上皮嗅細胞に応用した。嗅細胞受容体の刺激で生ずるcAMPはイオンチャネルを開き膜脱分極を起こす。対してOMPはcAMPの緩衝系として働き、脱分極を抑え神経活動を持続させる。生物燐光反応スペクトルとしてcAMPとOMPの相互作用を示すことで、嗅覚の脱感作機構へのcAMPとOMPの関与を明らかにした。以上(1)(2)の事から、これまで進めてきたニワトリ脳への応用から、マウスを含む多様な実験動物系へ応用を広げ、さらに新たに逐次分光計測法を活用できたことは、測光電極法を今後多くの研究者が活用できる測光手技として展開できる可能性を示した。
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