研究課題/領域番号 |
16K01965
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
田中 宏喜 京都産業大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (40335386)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 空間周波数チューニングダイナミクス / V1野 / 視覚情報処理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はV1野局所細胞集団の空間周波数選択性やその時間ダイナミクスの精密計測を行い、局所構造においてどのような空間周波数処理が行われているのかを詳細に記述するとともに、それに関する神経回路、神経結合基盤、機能的意義を探ることである。 これを解明するための第1のアプローチとして、研究計画段階では、電極点間隔が10ミクロン程度の高密度多点電極アレイを用いて、狭い範囲(0.3ミリ四方程度)の微細構造を調べることを考えていた。しかし低密度電極を用いて2ミリ四方範囲の6層全体から細胞記録を行い「層による空間周波数チューニングダイナミクスの違い」、「局所レベルでの空間周波数チューニングダイナミクスとV1野全体で伝達される空間周波数信号の時間変化との関係」、「V1野の大域的な粗い時空間スケールの神経同期と個々の細胞活動の時間ダイナミクスや空間周波数チューニングとの関係」を調べる手法と合わせることが、上記の問題を解明するうえでより効果的であるとその後考えるに至った。そこで2つのアプローチで研究を進めることとした。後者のアプローチに関しては、すでにデータベースとして所有している低密度多点電極アレイで記録したV1野細胞活動データを利用し、それを今回詳細に分析することで、局所構造をよりマクロに調べることを行う。 平成29年度の実績として、神経同期に関する研究成果を日本神経科学学会(幕張)、視覚科学フォーラム(豊橋)で発表し、視覚刺激にたいする個々の細胞活動の応答潜時や応答量が粗い神経同期に影響を受けていることを示した。また局所レベルでの空間周波数チューニングダイナミクスとV1野全体で処理伝達される空間周波数信号範囲の時間変化との関係の詳細な解析も行った。こちらは平成30年度日本神経科学学会(神戸)で発表することが確定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでのところ低密度多点電極を用いた解析を中心に行ってきた。これにより皮質6層と局所空間周波数チューニングダイナミクスとの関係を記述し、その成果は平成28年度のニューロコンピューティング研究会(大阪)で報告している。また、研究実績の概要で述べたとおり、神経同期と細胞応答ダイナミクスの関連や、局所ダイナミクスと集団レベルでの空間周波数信号伝達との関係を解析した。これらの成果は平成29年度、平成30年度の学会発表を行うほか、現在学術論文にまとめている。 一方で、低密度アレイデータの解析、論文執筆に大部分の研究時間を費やしたため、高密度アレイによる実験は十分進んでいない。これまでのところ、高密度アレイ電極を用いたデータ記録システムのセットアップを完了させた後、ラットを用いた予備実験を数回行い、高密度電極を用いて安定に細胞活動を記録できることは確認している。しかしながら、ネコを用いた本格的な実験には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べた2つのアプローチで本研究を遂行することを考えている。低密度アレイのデータ解析は一通り完了し、論文執筆もほぼ完了している。近いうちに論文を投稿する予定であり、平成30年度中に出版することを目標としている。またこの成果は平成30年度11月の北米神経科学学会において発表する予定であり、海外に向けて研究成果を発信していく予定である。 高密度アレイのデータ計測については平成30年度前半にネコを用いた2回の記録実験を計画している。平成30年度後半にデータ解析を行い、研究成果をまとめて、学会発表を行えるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述のとおり、本研究のアプローチの1つである低密度電極アレイ取得データの解析を優先して行ったきた。こちらの解析は順調に進み、本年度論文執筆を完了させたが、こちらに時間がかかった。このため、新たにデータ取得予定であった高密度電極アレイを用いた実験が遅れており、H30年度前半に行うことにした。
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