最終年度は、現地調査として、ジャカルタのコタ地区、パダンの歴史地区での調査を実施した。コタ地区は、2019年に入り、ジャカルタ特別州により広い地域での強制立ち退き、特に川沿いの集落の撤去、護岸整備などが急速に進んだ。ジャカルタ特別州政府は、コタの中心にある歴史博物館の改築・整備をおこなうと同時に、ブンハッタ大学ジョニーウォンソ博士(本研究研究協力者)に依頼し、具体的な歴史地区の範囲設定のための歴史建造物調査を実施している。この調査の結果、広場を中心とした東西南北のゾーニングが提案されているが、これはあくまでも残存する歴史的建造物の位置から提案されたものであり、今後考古学的発掘(現在まで実施されていない)調査の必要性を強くインドネシア側へ主張した。パダンにおいては、サワルントが産業遺産としてユネスコの世界文化遺産リストへ登録されたことから、バトゥサンカル遺跡保存事務所を中心として文化財保存行政は、そちらへの取り組みに集中しており、パダン歴史地区については、市任せになっている。市は、観光活用目的のため、歴史地区内にある旧駅舎の周辺の強制退去と、旧駅舎へ通じる線路跡に沿った整備をはじめ、駅舎から川沿い、海へと通じる遊歩道の整備を急ピッチで進めている。しかしながら、歴史的景観に関する配慮がないため、歴史地区より観光地区へと地域が変化しつつある現状が明らかになった。また、最終年度は、現地への調査成果還元として、西スマトラ州におけるアンダラス大学での講演、ジャカルタにおけるSwiss-German大学での講演を行った。
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