本研究は,(1)分割統治という超富裕層の表面には現れにくい戦略の可能性に着目し,参与観察と質的データ解析によって,弱者の新しい生存戦略を提示する,(2)開発研究において重要性は指摘されながら,分析が進んでいなかった「非経済的便益」について「社会関係」という代理指標を使うことによって,社会関係自体の緊密化が人々の「福祉」(well-being)を改善し得ることをあきらかにし,「社会関係資本論」に新しい視角を提示する,(3)新しい戦略オプションを用意することによって,貧困層のより能動的な開発への参加の誘発に寄与する,という諸点において,学術的,社会的意義があると考える。
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