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2019 年度 実施状況報告書

眠りの進化論:霊長類における睡眠文化行動の比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K01980
研究機関京都大学

研究代表者

重田 眞義  京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (80215962)

研究分担者 座馬 耕一郎  長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (50450234)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2021-03-31
キーワードタンザニア / チンパンジー / 睡眠場所 / サーモグラフィー / 寝相 / モーションキャプチャー / 脳波 / 新型ベッド
研究実績の概要

野生下のチンパンジーの活動/睡眠リズムと、それに影響を与える環境要因について、タンザニア、マハレ山塊国立公園にて現地調査をおこなった。2017年度のデータ収集方法について、2018年度の準備期間で改善をおこない実施した。
(1)1日の活動/睡眠リズムの把握:夜間では視覚による観察が難しいため、日中と夜間で同一の方法で連続観察を行うべく、ICレコーダーによる音声記録をおこなった。チンパンジーは夜間に樹上のベッドで休息をとるため、ICレコーダーは樹上ベッド付近に設置して記録した。(2)活動/睡眠に与える捕食者などの他の動物の影響:チンパンジーの潜在的な捕食者であるヒョウや、チンパンジーに対して攻撃的行動を行うこともあるアカコロブスなど、さまざまな動物の活動が活動/睡眠にどのような影響を与えるか把握するために(1)では、他の動物の音声を記録することも目的とした。(3)温度環境と光環境の記録:日中に追跡観察し、同時に活動地点の温度と照度を記録することで、チンパンジーの活動/睡眠に与える温度や光環境の影響についてデータ収集をおこなった。(4)夜間観察:樹上のベッド上の野生チンパンジーは、高台から見下ろすことができれば赤外線ビデオカメラや暗視スコープで観察可能であったが、2019年度の調査では観察条件が整わなかったため断念した。
ヒトの睡眠文化行動に関しては、直接観察とビデオ画像によるモーションキャプチャー分析の結果を元に脳波の波形分析結果と対照させて、睡眠時の行動(寝相)と睡眠環境の諸条件との相関を明らかにする実験をおこなった。新型ベッド(楕円形で周囲が盛り上がり、360度の方向に揺れるベッド)と通常のベッドについて、健康な成人男女各1名を被験者として、脳波の計測による夜間終夜睡眠記録および非侵襲的な睡眠文化行動の映像記録を3日間にわたっておこない、合わせて聞き取り面接調査を実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度はタンザニア、マハレ山塊国立公園において、25日間にわたって野生チンパンジーの現地調査をおこない、詳細なデータ収集をおこなうことができた。収集した資料は、ICレコーダーによる昼間の音声記録:18日分、夜間の音声記録:12夜分、温度と照度の記録:22日分、ビデオ:909ファイル、写真:2,187枚である。チンパンジーの夜間の睡眠については、観察条件が整わず、赤外線ビデオカメラや暗視スコープを用いた目視による観察をおこなうことはできなかったが、そのような状況への対処方法を準備していたため、音声記録による昼夜の連続観察による資料を収集することができた。ヒトの睡眠行動に関する実験的なデータを蓄積したこと、脳波の測定を加えたこと、モーションキャプチャの手法を導入したことにより、より精度の高い分析を行うことが可能になった。
また調査で収集した資料や研究成果は、学会誌で紹介するだけでなく、地域の小学校や大学図書館、動物園において講演を行うことで、多くの人に知ってもらうことができた。

今後の研究の推進方策

2019年度に収集した資料について、以下の分析をおこなう。(1)音声データを分析することで、各時間帯の発声頻度を示し、チンパンジーの活動/睡眠のリズムの記述をおこなう。チンパンジーは昼行性の霊長類だが、夜間に活動をすることがあることや、昼間に睡眠をとることが知られており、この分析結果はチンパンジーの活動/睡眠リズムの基礎資料として利用する。(2)音声データの分析において、他の動物の音声についても分析をおこなう。チンパンジーの昼夜の発声のうち、他の動物の音声が起因となったものを抽出することで、チンパンジーの活動/睡眠リズムに与える他の動物の影響について考察する。(3)温度環境と光環境について分析をおこない、同時に記録したチンパンジーの活動/睡眠リズムの記録と比較をおこなう。
これらの分析結果を総合し、野生チンパンジーの活動/睡眠リズムとそれに与える環境要因をまとめる。またチンパンジーの活動/睡眠リズムと、ヒトの活動/睡眠リズムと比較することで、ヒトの睡眠の進化的基盤を考察する。

次年度使用額が生じた理由

年度末に発生した新型コロナウイルスによる影響のため、出張と雇用およびそれに関連した経費の執行ができなかったため。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] チンパンジーの眠りを感じる2019

    • 著者名/発表者名
      座馬耕一郎
    • 雑誌名

      デザイン学研究特集号

      巻: 26(1) ページ: 32-39

  • [雑誌論文] ベッドで眠るチンパンジー2019

    • 著者名/発表者名
      座馬耕一郎
    • 雑誌名

      どうぶつと動物園

      巻: 72(2) ページ: 32-33

  • [学会発表] チンパンジーの研究から考える私たちの睡眠2019

    • 著者名/発表者名
      座馬耕一郎
    • 学会等名
      第31回日本医学図書館協会北信越地区研修会、長野(2019年9月27日)
    • 招待講演
  • [学会発表] チンパンジーのベッドに魅せられて2019

    • 著者名/発表者名
      座馬耕一郎
    • 学会等名
      家庭教育学級講演会、茅野市立湖東小学校(2019年10月19日)
    • 招待講演
  • [学会発表] ベッドで眠るチンパンジー2019

    • 著者名/発表者名
      座馬耕一郎
    • 学会等名
      第5回都立動物園アフリカフェア──野生動物のふるさと アフリカの今とこれから、多摩動物公園(2019年10月27日)
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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