研究課題
近年、東南アジアの泥炭湿地林においては、大規模プランテーションや農地開発等のため泥炭火災が頻発しており、これがCO2の大量放出による地球温暖化や、煙害による周辺諸国での交通および健康被害といった大きな環境問題の原因となっている。泥炭火災後には火災強度や環境要因の違いによって様々な植生の発達が見られるが、その種類や生育環境要因を明らかにすることは、泥炭湿地林の保全を考える上で非常に重要である。そこで、大規模な火災の被害が見られるスマトラ島リアウ州の泥炭火災跡地において、火災後に発達する草原植生の分布とその環境要因に関する調査を行った。その結果、草原植生の種類が地下水位とその水質によって決定されていることが明らかとなり、地上部植生が泥炭火災跡地の環境条件を判別する上での明確な指標となることが示唆された。この結果には中部カリマンタン州で行われた既存研究との類似性が認められたため、現在、西カリマンタン、南カリマンタン州の泥炭火災跡地を含めた広域を対象とした文献収集と調査を行い、泥炭火災後の草原植生の分布とその回復可能性を理解するためのモデルを構築中である。加えて、草原植生の後に発達する二次林についても検討する予定である。これまで国際学会で複数回の発表を行うとともに、インドネシア、マレーシアおよびブルネイの熱帯泥炭湿地林の環境問題に関する文献研究を行い、これに関する論文を出版した。また、泥炭湿地林の回復可能性に関するレヴュー論文も現在投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
インドネシアの各泥炭湿地林について、順調に過去および現在の森林に関するデータの収集を行いつつある。また、インドネシア、マレーシアおよびブルネイの熱帯泥炭湿地林の環境問題に関する文献研究を行うことによって、各国における熱帯泥炭湿地林の現状とそれぞれの政策の違いについての理解が深まり、これをレヴュー論文として出版している。このため、研究は概ね順調に進展していると言える。
おおむね当初の計画通りである。現在、インドネシア中部カリマンタン州の熱帯泥炭湿地林と熱帯ヒース林にトランセクトを設置して森林調査を行っており、今後は土壌条件の連続的な変化によって森林の種組成、群集構造、それぞれに生育する樹木種の葉や材などの特性がどのように変化するのかについての解析を行う予定である。
プロジェクト期間中に長期間、東南アジア地域に滞在する機会があったため、そこを拠点として現地調査を行い、旅費を節約することができた。次年度分と合わせて引き続き海外現地調査の旅費として使用する予定である。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/research/kaken/