研究課題/領域番号 |
16K01983
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中内 政貴 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (10533680)
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研究分担者 |
木場 紗綾 同志社大学, 政策学部, 助教 (20599344)
安富 淳 一般財団法人平和・安全保障研究所, その他部局等, 研究員 (50704673)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 軍の民主的統制 / 東南アジア型内発モデル / 東欧型外圧モデル |
研究実績の概要 |
平成28年度中には研究成果を論文等の形であらわすまでには至らなかったが、東南アジア諸国との比較によって西バルカンの新興民主主義諸国の国軍改革過程を明らかにするという研究目的に向けて、理論と事例の検討を進めている。 理論面では、研究分担者が著名なドイツの研究者と意見交換する中で、東南アジア内発型モデルとされるものについても、よりアクターに注目したキメ細かな分析を行う必要性について有益な示唆が得られた。同じように欧米のNGOなどから国軍改革に向けた圧力を受けた東南アジア諸国においても、各国の主権や軍事に対する文化の相違や、政治と軍との人間関係の相違などによって、各国の事情は大きく異なることが再確認された。今後、各国の過去数年間の国防予算や国軍改革案やロードマップといったものの軍内部での策定過程や、それが政治プロセスでどのように扱われたのかといった点を各国について検討する予定である。 また、西バルカン諸国を含む旧東側諸国での国軍改革については、マルクス・レーニン主義の下で軍は少なくとも文民統制という考え方には慣れていたため、国軍改革における出発点が東南アジア諸国とは異なるという指摘も得られた。これは首肯させられる点ではあるが、それだけに、改革の進展が各国で大きく異なる理由を明らかにする本研究には新たな意義があると考えられる。この点も踏まえて、今後の2年間で確実に成果を残すべく、計画に沿って研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、クロワッサンをはじめとする軍社会学の基礎文献の確認、および、調査対象各国の現況についての資料の収集を行った。また国軍改革を研究する欧州の研究者らと意見交換を行い、分析レベルや各国・各組織におけるアクターの役割などについて重要な示唆を得た。それらを踏まえて、大阪と東京において研究代表者と研究分担者全員が集まる研究会を計2回開催し、各自の研究の進捗状況について情報を交換し、東南アジア型内発モデルと東欧型外圧モデルの理論的枠組みの構築に向けて議論を行った。その上で、平成29年度に実施予定の現地調査について各自の役割を再確認し、予定の策定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、まず、先行研究と東南アジア諸国の事例から、内発型の国軍改革としてのモデル化を行う。従来から指摘されてきた、文民政治家と軍指導者との個人的ネットワークという要素についても国によって事情は異なるので、各国の状況を再精査し、オリジナリティーを持ったモデルとすることを試みる。その上で、現地調査を行い、欧州の新興民主主義国である西バルカン諸国の国軍改革に対して、同モデルの適合性や相違点を明らかにする。 平成30年度には、それまでの調査・研究の成果をもって、西欧の国軍改革の専門家との間で議論を行い、また、国内外の学会において研究報告を行い、成果を論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度後半に追加採択いただいたので、そこから計画を再度練り直しつつ研究を始動させた。このため、まずは各自がすでに入手していた資料の共有・読解が中心となり、物品購入費や人件費・謝金が発生しなかった。また、大阪での研究会開催の際は、東京在住の研究分担者が別用で来阪する機会を利用して行ったため、旅費を節約することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、研究計画どおり、東欧諸国への現地調査出張を予定しており、これに伴い旅費や、資料読解のための人件費・謝金等が発生する予定である。また、これまでに進めてきた基礎的な文献の調査に加えて、さらに先端的な文献を入手する必要性も高くなる。研究会もさらに頻繁に開催することが必要となる。このため平成29年度に割り当てた予算を予定通り執行することに加えて、平成28年度の残額についても平成29年度に執行する予定である。
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