研究課題/領域番号 |
16K01987
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
西 佳代 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 外来研究員 (90416058)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 低線量内部被ばく / 除染技術 / しきい値 / アメリカ海軍 |
研究実績の概要 |
これまでのところ、アメリカ合衆国(以下「アメリカ」)政府の公文書により、冷戦期にアメリカとソヴィエト社会主義共和国連邦の間で核開発競争が始まると、アメリカ海軍が、核戦争に備えて放射能の除染技術を開発するとともにしきい値を設定することが、自らの果たすべき国家安全保障上の役割と定義したことを明らかにしてきた。具体的には、放射能汚染された飲料水の除染にかんする調査研究を推進したことを明らかにしてきた。 現在は、アメリカ海軍が1951年にグアム島に完成させたフェナ貯水池に着目し、同海軍の飲料水除染技術にかんする研究開発の実態を明らかにしようとしているところである。しかし、フェナ貯水池は最近まで海軍が所有していたことから、これまでのところアメリカ海軍がフェナ貯水池にかんしてどのような水質調査を行っていたのかについての歴史的な資史料を入手することは困難であった。そこで本年度は、アメリカ地質学調査所(U.S. Geological Survey)が1946年から1956年にかけて実施した「太平洋諸島地質図作成プログラム(Pacific Geologic Mapping Program)」の報告書を入手し、グアム島の水資源に関連する調査内容を明らかにした。同プログラムは、地質学者が水文学や陸水学の専門家とともに、太平洋諸島に基地を建設するうえで必要な情報を軍に提供する目的で実施したものであり、グアム島では1951年8月から1954年12月にかけて水文学を含む調査を実施している。同プログラムの報告書をつうじ、軍が島の水資源について持っていた関心事を伺うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フェナ貯水池は海軍所有であったため、水質調査にかんする資史料を入手することは困難であった。そのため、アメリカ地質学調査所(U.S. Geological Survey)が1946年から1956年にかけて実施した「太平洋諸島地質図作成プログラム(Pacific Geologic Mapping Program)」を手がかりとして、軍のグアム島の水資源に対する関心事を、ある程度明らかにすることはできたものの、アメリカ海軍が放射能汚染水の除染技術開発のために実施した調査研究活動の具体的内容については、明らかにできていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は「太平洋諸島地質図作成プログラム(Pacific Geologic Mapping Program)」関連の報告書を収集し、海軍がグアム島の水資源についてどのような情報を入手したかを考察することによって、可能な限りアメリカ海軍のグアム島におけるフェナ貯水池の運用実態を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に研究成果を出版することができなかったが、今年度は書籍として出版する予定である。
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