本研究の目的は、1956年法に基づく州際ハイウェイが完成した次の段階として、1990年代以降に進められた全米規模の交通システムの高度化・複合化の時代における連邦道路補助金を検討対象として、政府間財政関係における分権メカニズムと、州・地方政府の主体的な政策運用を明らかにすることである。具体的には、(1)連邦法に内蔵される分権的な仕組みとその論理、(2)州・地方政府の主導性を前提とした連邦政府側の政策運用、(3)州・地方政府の主導的な政策運用における連邦補助金の活用実態を研究した。 2018年度は、計画1年目と2年目に収集した議会資料等と、現地調査で得た情報を分析し、日本国内のアメリカの財政・福祉・医療・教育等を含む多分野の研究者と継続的な研究会を通じてアドバイスを受けながら、成果を論文として公表した。 研究期間全体を通じた実施した研究の成果としては、(1)1991年ISTEA(Intermodal Surface Transportation Efficiency Act of 1991)を検討すると、連邦補助金の交付要件は大枠としてそれぞれの州が許容しうる最小限度のものであり、(2)連邦法の審議過程からは、連邦側の運営は、州・地方側の先行的な取り組みを前提としており、州・地方側における柔軟性が確保されていることが明らかとなった。(3)先行的な道路・交通政策に関するカリフォルニア州とバージニア州の事例研究からは、地域レベルから積み上げるボトムアップ型の合意形成と計画策定をベースとして、州政府が多様な財源調達の努力と成果評価・監査を実施し、それらの努力を強化する役割を連邦補助金が担う構造を明らかにした。 研究成果は、アメリカ学会(第51回年次大会)で報告を行い、学術論文として公表した。これらを軸の一つとして、2019年度に学術書(単著)を刊行する予定である。
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