研究課題/領域番号 |
16K01990
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
塩原 俊彦 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (60325397)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ガスプロム / 対中協力 / 軍事協力 / ガスパイプライン / ロスネフチ |
研究実績の概要 |
拙著『ガスプロムの政治経済学(2016年版)』の第1章第4節「対中協力」のなかで、(1) 中国国内のガス概要、(2) パイプラインによる対中ガス輸出において、ガスパイプラインの状況を中心に分析した。さらに、第1章第5節「国際戦略」のなかで、「エネルギー関連からみた中ロ協力」についても考察した。 「2015年5月8日に中ロ協議の結果、署名された文書」、「プーチン訪中時に習近平との会談過程で2016年6月25日に調印された共同文書」を詳しく分析し、とくに深まりつつある中ロのエネルギー分野での協力関係について言及した。とくに、後者において、「20.中国開発銀行と中国輸出入銀行のクレジット手段を公開型株式会社「ヤマルLNG」が選別する原則に関する議定書」、「23. ガスプロムとCNPCとの間の、中国領内でのガスの地下貯蔵やガス発電の部面での協力の諸問題に関する相互理解議定書」、「24. 公開型株式会社「ロスセチ」と中国国家送電会社との間の合弁企業設立に関する株主間協定」などが重要であると指摘した。 他方で、拙著『ロシアの最新国防分析(2016年版)』の第3章「武器輸出」において、対中軍事協力について分析した。とくに重要なのは、Su-27の最新の改良ヴァージョンであるSu35について、2009年に48機の納入契約がロシア軍との間に結ばれ、2015年に完全に遂行された。同年11月、24機のSu-35の輸出契約が締結された。最初の2機は2016年末までに供給される見込みだ。これは中国への輸出で、取引規模は25億ドルと推定されている。このほかに、2017年から納入が開始される防空システムS-400、6基の輸出も決まり、2015年の受注総額は50億ドル強となったとみられている(2014年に最初のS-400の契約が行われた)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年2月、ロシアの連邦保安局によって拘束された。この事情については、拙著『プーチン露大統領とその仲間たち:私が「KGB」に拉致された背景』に詳しく記述したが、これを契機に、ロシアへの出張を断念せんざるをえない状況に追い込まれている。第一に、ビザ取得が困難であること、第二にビザが取得できても、入国後、逮捕される可能性があることが理由である。ときに、ロシア側の「スパイになれ」との要求を拒否した結果、入国するれば、逮捕される可能性が十分にある。 ロシア側はわたしの国防分析をきわめて警戒している。ゆえに、わたしのモスクワでの活動状況を滞在翌日から入念にチェックしていたとみられる。ただ、ロシアの軍事専門家と会合してきたたけだが、ロシア政府の琴線に触れる部分があったのだろう。 こうした事情から、ロシア訪問が難しくなったため、中国出張を中心に中国側からロシアとの関係について調査するという、これまでとは異なる方向からの分析が必要になっている。この方向からの研究には、ある程度の準備期間が必要なので、やや研究が遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
北極海開発および極東開発における中ロ経済協力を中心に、中国側からの情報を活用しながら分析する。 北極海開発については、北海道大学の田畑伸一郎教授とともに、エネルギー分野での中ロ開発協力について研究を進めたい。加えて、北方航路ルートにかかわる中ロの協力、LNG運搬船の協力など、船舶輸送についても研究する。とくに砕氷船建造での協力についても調査したい。 極東開発については、急速に進む温暖化で、自然発火による火事の増加、土壌問題などが深刻化している状況下で、中ロの農業や林業での協力がどう進展しようとしているかについて考察する。さらに、鉄道による中ロ間の輸送問題を北極圏開発と関連づけながら分析することも行う。 他方で、中ロの軍事協力についても継続して考察する。今年度はサイバー空間における中ロ協力についてもこれまで以上に注意を払いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年2月のモスクワでの連邦保安局による拉致事件後、ロシアへの海外出張を見合わせたことによる研究予定の変更のため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究文献収集にあてるほか、中国やフィンランドへの海外出張にあてる。
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