ロシアと中国との「空間」協力として、主にエネルギー協力、軍事協力、サイバー空間協力について考察した。 エネルギー協力の面では、いわゆる西ルート(シーラ・シベリア-2、SS-2)の最終契約の締結での遅れに注目した。ガス輸出価格をどう設定するかが課題だ。SSを利用した既存の対中ガス輸出価格については、ロシア側に不利であるとの議論がロシア国内にあることから、ロシア政府としても価格設定交渉に慎重になっている。中国側からみると、米中貿易戦争のなかで、米国からのLNG輸入拡大が中国の対米黒字減らしに役立つことから、ここでの譲歩がロシア産ガスへの依存を強めない結果につながる。これをテコにして価格交渉を優位に運ぶことが可能となる。 軍事協力面では、2018年9月に過去最大の中ロ軍事演習(ヴォストーク2018)が実施されるといった両国関係の緊密化や武器取引の増加などに注目した。2017年のロシアの武器輸出額は約150億ドルで、うち対中輸出額は18億ドル(構成比12%)となった。防空ミサイルシステムであるS-400や多機能戦闘機、Su-35などの納入契約が締結され、遂行過程に入っている。 サイバー空間協力については、いわゆる「ディスインフォメーション」で先行するロシアを中国が模倣している実態と、中国からの電子製品のロシアへの輸出動向などについて考察した。とくに、中国企業はロシア市場への進出を積極化している。 他方で、中ロは中央アジアにおける「権益争い」を行っており、その実情も分析した。具体的には、集団安全保障条約機構とユーラシア経済連合を軸に協力を推し進めるロシアと、上海協力機構を軸に主として経済面からの影響力拡大をねらう中国との思惑の差に注目した。
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