研究課題
対象地域の過去の疾病・死亡の変化を調べるための手法として、死因と死亡前の治療行動を家族から聞き取る質問票を作成した。質問票の趣旨として、死因を厳密に推定するよりは、現地の社会条件・自然環境のなかで人がどのように死んでいくのかを、まずは概要を把握することを目的とした。農村の乳幼児・子ども・成人が(1)どんな病気で死んでいるのか、(2)死ぬ前にどんな治療をどの程度受けているのかを第一に明らかにすることにした。そして、徐々に時間をさかのぼって過去の死亡事例についてもたずねていき、質問票を改良しながら、死亡パターン・トレンドに経年変化を見いだすことを今後の目標とする。最低限外せない事項として、(1)病気の症状・種類、(2)病気にかかっていた期間、(3)亡くなった場所、(4)かかった医療費である。質問票の仕様は、ごく簡単に、スマートフォン・ベースのサーベイアプリで約10分でインタビューが終了できる分量を目安とした。この質問票により、当人がどういう病気でなくなったと周りの家族が考えているのか、ならびに、病の進行に対して家族がどういうインターベンションができたのか、反対に何ができなかったのかを明らかにする。インターベンションの可能範囲から、私たちが当然と考えている世界とはかなり異なる死の風景が浮かび上がることが期待できる。なお、成人用と子ども用(0-12歳)を準備する。最初に英語で全体を組み立て、その後、ラオス人の協力者と協議しながら、ラオス語に翻訳した。以上のほか、科研の研究課題に関連する研究発表を国際会議でおこない、出席者と討議して研究のねらいをより明確にできた。
2: おおむね順調に進展している
初年度の目標にしていた質問票の開発が計画通りに進んだ。また、関連する研究発表をおこない、他の研究者と情報交換できた。
次年度は、質問票をさらに改良しプリテストで問題点を検証したうえでデータ収集を開始する。同時に、地域の社会・自然環境に関する聞き取りも実施し、地域史のなかに死亡という出来事の変遷を位置付ける。調査の中間報告として、国際会議で研究発表し、論文も執筆する。
当初計画では、初年度に現地に渡航してラオス側の研究協力者との打合せ、ならびに現地調査を実施する予定だったが、現地協力者が別の用務に多忙で日程調整がつかなかったため、現地への渡航を次年度に持ち越すことにした。初年度の課題であった質問票の作成は、メールとネット電話を通して実施した。
次年度は現地協力者の日程を優先的に確保してもらい、初年度に予定していた現地渡航とデータ収集を集中的に実施する。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Malaria Journal
巻: 15 ページ: 508
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