ラオス農村部では近年、社会経済変化が著しい。住民の死亡動向もそれにつれて変化していると考えられる。ところが統計資料が未整備のため、農村部における死亡の実態を把握することは困難である。そこで本研究は、ラオス農村部の死亡の動向を明らかにするため住民の聞き取り調査を実施した。本年度はラオス南部にある研究対象地域で調査を行い、その結果を研究会議で発表した。現地調査の結果、過去10年間における170 件の死亡ケースについて死因や死亡前の受療行動について、家族から聞き取りすることができた。死亡時点の平均年齢は男性 63 歳、女性 60 歳だった。多くの人が高血圧や糖尿病など慢性疾患をかかえており、50%以上の人が 1 か月から 12 か月の闘病生活の後に亡くなっていた。170 件の死亡例のうち、153件が何らかの病気によるものだったが、医師の診断を受けた(と家族が答えた)のは 77 件だった(ただし診断書はなかった)。大半の人は最寄りの郡病院で治療を受けたが、ガンやその他治療困難な病気と診断された後、自宅での薬草治療に切り替えて最期を迎えるケースがほとんどだった。そして 170 人中 152 人が自宅で最期を迎えた。多くの死亡ケースは男女とも65歳以下であり、限定的な治療を短期間受療した後に発生していた。この調査結果をもとにポスターを作成し、ラオス保健省が開催した保健研究会議で発表した。農村部の死亡例の実態調査はこれまでに例がないため、研究の意義を評価された。そして、これまでの研究成果を発表するため英語論文を作成した。
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