研究課題/領域番号 |
16K01995
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
渡会 環 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (50584372)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国際移動 / キャリア形成 / ブラジル人 / ジェンダー / 生活世界 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本あるいはフランスへ移住したブラジル人女性を事例に、女性移民が生活世界を構築する過程について明らかにすることである。平成30年度は4月から3月に亘り、フランスで調査を実施した。この長期調査では、特にキャリア形成に焦点をあて、フランスで「移民の仕事」として捉えられている「ケアワーク」に従事した経験のあるブラジル人女性に対しインタビューを行った。インタビューでは、ケアワークでの実績やケアワーカーを対象とした講座の受講がよりよい条件での雇用や他の職種への転職へと結びついているかをたずね、移民の職業選択やキャリア形成がどのような条件によって可能となるのかを考察した。また、先行研究およびブラジル人コミュニティで活動する3団体(ブラジル人女性への支援を目的とする2団体、ポルトガル語での礼拝を行う教会)へのインタビューを通じ、ブラジル人女性のフランスへの移住形態やコミュニティ内での相互扶助の有無などを調査した。このほか、家事労働者を中心に移民労働者の支援を行う労働組合の職員にもインタビューを行った。労働者としての権利の移民への周知や、フランス語をはじめとする職業訓練について話を聞いた。老人科を専門とするフランス人医師と科の秘書にもインタビューを行い、フランスにおける老人科の役割、ケアワークに携わる移民労働者の実情について話を聞いた。「移民の仕事」の評価できる点として、インタビューをしたブラジル人女性はフランス語力の向上とフランス社会の理解促進を挙げていた。日本でブラジル人女性の多くが携わる工場での労働とは異なり、サービスの受け手であるフランス人と常に接触するためである。語学力を基盤にして他職種へ転職し、その転職先でフランスでは労働者が受ける権利として提供されている職業訓練を活用して専門性をさらに高めたり他職種へ転職する事例も見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は所属研究機関の長期学外研究制度を利用したため、11ヶ月に亘るフランスでの現地調査が可能となった。インタビューは、「ケアワーク」に従事した経験があるブラジル人女性に対しては23人、ケアワークへの従事経験がないブラジル人女性には7人、に行うことができた。このほか、家事労働者を中心に移住女性労働者の支援を行う労働組合の職員、老人科を専門とするフランス人医師と科の秘書にもインタビューを行った。労働者としての権利の移民への周知や、フランス語をはじめとする職業訓練について、フランスにおける老人科の役割、ケアワークに携わる移民労働者の実情について話を聞くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画としてはまず、在日ブラジル人の新たな職業選択の事例として、またフランスのブラジル人ケアワーカーと比較するためにも、日本でケアワークに従事するブラジル人についての調査を進める。「ケアワーク」は現在、「外国人材の活用」が日本政府によって検討されており、在日ブラジル人を対象とした介護の講座や介護分野の日本語講座も開催されている。在日ブラジル人の職業選択肢の一つになりつつあるケアワークを通じて、在日ブラジル人の職業選択やキャリア形成がどのような条件によって可能となるのかを考察したい。なお、インタビューはこれまで、介護に従事した経験を持つブラジル人女性6人、男性1人に対して行っている。平成31年度は引き続き、インタビューを行う。この「ケアワーク」という職業に焦点をあて、在日ブラジル人のキャリア形成をテーマに新たな研究計画を立て、令和2年度の科研費に申請する。また、平成31年度中に学術誌への論文の投稿を行い、本研究成果を発表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に日本の外国籍住民のキャリア形成を考えるワークショップを開催するために、使用額を残した。
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