本研究は、インターセクショナリティという視座に基づき、移民女性のエージェンシーに着目しながら、日本とフランスに移住したブラジル人女性たちが構築する生活世界を明らかにしたものである。ブラジル人女性移民はそれぞれの社会で受ける自身の(不)可視性を経験しながら、職業アスピレーションを強めてもいた。女性移民の側で(不)可視性を利用することがあった。それはケアワークに従事する者に顕著であった。文化資本の利用はブラジル人ケアワーカーが労働市場において有利にもし、職業的アスピレーションも強めているが、「ブラジル人」という特定のイメージが引き続き社会の周縁に彼女たちを位置づけてしまう恐れも指摘できる。
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