今年度は当該研究課題に関する関連書籍(共著)を二冊上梓し、国際学会(アメリカ・アジア学会)を含む二度の学会発表を行なった。いずれもアメリカ文化とアジア文化の交差する領域に関する研究で、著書(共著)においてはアメリカのヒップホップシーンにおける中国や日本などのアジア文化の表象や、村上春樹作品にみるアメリカの音楽文化の様相を分析した。なお、村上春樹論(共著)は韓国語版が2019年2月に刊行され、中国語版の翻訳も進んでいる。2019年3月にコロラド州デンバーで開催されたアメリカ・アジア学会では、1970年代の日本の音楽文化がいかにアメリカ文化の影響のもとで成立したかについて発表した。また、シンポジウム「アメリカ大陸のブラック・ミュージック」では、スペイン語圏文化とフランス語圏文化の研究者と南北アメリカ大陸における文学と音楽をテーマに発表し、討議したことで、国境を超えた文化の影響関係について理解を深め、有意義な対話を行うことができた。それに加えて、韓国のK-POPのアメリカでの受容に関するエッセイを批評誌『ユリイカ』(青土社)に寄せ、雑誌『三田文学』にヒップホップのリリックを英詩の伝統に位置付けて解析する連載を始めた。また、直接の成果ではないものの、慶應義塾大学日吉キャンパスで開催された日本ポピュラー音楽学会第30回記念大会の実行委員長として、日本における30年間のポピュラー音楽研究を総括するシンポジウムを企画し、大会全体を滞りなく実行した。
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