研究課題/領域番号 |
16K02000
|
研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
米倉 雪子 昭和女子大学, 人間文化学部, 准教授 (60566389)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 国際協力 / 地域研究 / 乳幼児 / 栄養不良 / 生計記録 / カンボジア / 農村 / 出稼ぎ |
研究実績の概要 |
カンボジアのカンポット県、プレイヴェン県、タケオ県の計6村で、研究協力者のカンボジアNGO・CEDACと農家リーダーと協力し、乳幼児の体重測定と生計記録を行い、母親の出稼ぎによる乳幼児への影響の検証をめざした。CEDACスタッフが毎月、対象6村を訪れて、農家リーダーのボランティアによる乳幼児の体重測定と記録、生計記録を確認し、記録間違いは訂正し、改善に向けてアドバイスをした。毎月、乳幼児の保護者と会合をもち、離乳食、栄養などについて話しあい、改善を促し、アドバイスした。 研究代表者は平成28年8月と平成29年3月に6村で家庭訪問をした。多くの村で母親が出稼ぎに行き、祖父母が乳幼児の世話をするケースが見られた。が、母親が出稼ぎに出ている家庭を選んで訪問するのではなく、成長に問題がある場合の理由を確認することにした。 平成28年8月は体重が数カ月、あまり増えておらず問題が大きい子どもの家庭を選んで訪問した。主な原因は、1)不適切な薬:病気で飲んでいる薬を見せてもらったところ、無関係で不適切な薬を飲んでいた。2)下痢:不適切な粉ミルクの作り方のため母親の妊娠や出稼ぎで粉ミルクを飲ませて下痢になる、牛乳を飲むと下痢になるので豆乳に変え下痢しなくなったなど、3)栄養不良:朝ごはんに白粥に魚醤、白粥に塩・MSG、冷や飯に砂糖など。全般的に野菜不足。 平成29年3月は体重が増えてはいるが順調ではなく、このままだと成長モニタリング曲線が黄や赤ゾーンになる子どもの家庭を訪れた。子どもの世話をしている人に会い、食事について訊いた。より記憶が正確と思われる面談の前日に子どもが何を飲食したか、を答えてもらい、次の傾向がみられた。母親の多くが出稼ぎに出て、祖父母が世話をしている。野菜不足。子どもにスナック、甘い飲み物を買い与え、食事を食べておらず栄養不足。保護者の栄養に関する知識不足。食費は有する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体的に計画通り、順調に進展している。 一点、生計記録シートはかなり簡略化したものの、やはり成人の識字率が7割のカンボジアで、農家リーダー以外の一般の農家が無理なく記録できるシートの作成は課題が多い。 また出稼ぎに出た先でも収支を各自が把握することが重要だが、出稼ぎをすると記録を止めてしまい、親が生計記録をしている場合は、子どもからの収入として記録されている状態である。 そこで農家女性の出稼ぎによる乳幼児の栄養・健康と生計への影響については、出稼ぎをする本人の収支と子どもの栄養・健康への影響よりも、出稼ぎ者の子どもを預かる祖父母が仕送りを受けて収入があがる一方、どのような影響が子どもの栄養・健康にあるかをみていく。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きカンボジアのカンポット県、プレイヴェン県、タケオ県の計6村で、CEDACと農民自然ネットワーク(FNN: Farmer Nature Network)と協力し、計画通り、乳幼児の体重測定や生計記録を行い、母親の出稼ぎによる乳幼児への影響の検証をめざす。研究協力者のCEDACスタッフが毎月、対象6村を訪れて、農家リーダーのボランティアによる乳幼児の体重測定と記録、生計記録を確認し、記録間違いは訂正し、改善に向けてアドバイスをする。毎月、乳幼児の保護者と会合をもち、離乳食、栄養などについて話しあい、改善を促し、アドバイスする。 前回の訪問時に、体重測定に子どもをつれてくる保護者と家で調理する者が異なっていたり、出稼ぎに出ている親がスナック菓子など乳幼児に良くないおやつを買い与えることがあることがわかったので、家族内で栄養などについて学んだことを共有することも徹底する。 栄養の改善と生計の収支の改善を意識化し、改善を促すため、農業研修、栄養研修、生計記録研修を行う計画である。研修後は、その結果、研修で学んだことを実際に本人が実践したかどうかを確認する。家庭菜園での栽培状況、乳幼児の食事内容、乳幼児の体重が順調に増えているか、生計記録の内容などに応じて、改善策をアドバイスする。 生計記録については、平成28年度に新生計記録シートで試みた翌月の予算づくり、翌年の予算づくり、月一回の食事記録、貯金額、借金額・返済額・利子は、記入に困難を感じる記録者もおり、毎日・毎月の収支だけは知りたいのでつけているという者が多かった。そこで、農家の役に立ち、多くの農家が記入できる収支のみを記録するシートに改訂するかどうか、を平成29年度、見極める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年3月までの支出が未精算であるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の会計精算を行い、平成29年度は計画通りに使用。
|