おおむね計画通り実施した。本研究により、母親の出稼ぎが乳幼児の成長に負の影響を与えることがわかった。最終年度に栄養・健康・有機農業研修を改めて実施し、乳幼児の食事を改善したり、家庭菜園を実践する者もいた。日本の保健NGO・SHAREを招き、研究協力者のCEDACスタッフ、農家リーダーに対し、乳幼児の栄養と離乳食調理のTraining of Trainers研修を実施した。その後、対象6村でCEDACスタッフと農家リーダーが研修を実施し、フォローアップを実施した。有機農業研修も行なった。前年度までに、体重が順調に増えていない乳幼児の家庭訪問、聞き取り調査から、収入も少なく、家庭菜園を実施していない家庭もあると判明したからである。 生計記録は成人識字率が低いカンボジア農村では困難で、各村で1年以上、継続できた人数は1人~数名だった。最終年度までほとんどの者が、毎日の収支は記録できたが、毎月の合計ができなかった。各月の項目別の合計を12か月の年表に記入した者は皆無に近かった。毎月の記録や合計の計算をCEDACスタッフが毎月、確認し、訂正をすることが最後まで続いた。そのため農家が1か月、1年の収支を把握し、翌月・翌年の予算を立てることはほぼできなかった。毎月の借金原本と利子返済、貯金の記録も促したが、ほとんど記録されなかった。栄養を知るため、月例会の前日1日に食べた物を記録してもらったが、実施した者は少なかった。 そこで最終年度に収支のみを記録するシートを紹介した。数人の若い農家が記録を試み、節約を始めるなど変化がみられた。毎月、村人に収支記録を勧めたが、試みたのは数人のみだった。 生計記録をつけ続けた模範的有機農家の農業収入が工場労働者の最低賃金・月170ドル・年2040ドルより多いことが確認された。この農家は、2017年の収入の65%は有機農業からで、2100ドル以上を得た。
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