研究課題
本研究は、19世紀末の英米に始まった「新しい女性」現象の影響を受け、20世紀初頭のアジア諸地域で「近代的で自立した存在」としての「新しい女性」像が出現し変容を遂げた状況を、「憧れ」という情動に注目しつつ比較研究するものである。「憧れ」を参照軸に置くことで、その主体や対象だけでなく、憧れを醸成する様々な装置や「抑圧」の側面も射程に含め、人びとの情動の面から新しい「近代の肖像」を描き出すことを目的とした。また、比較研究を通し、国境や地域を越えた情動の影響関係や、価値の形成過程で見られた摩擦や葛藤のさまを明らかにする。各自のテーマとしては、イギリスの女性宣教師(山口)、エジプトの男性知識人(後藤)、日本のモダンガール(青木)、インドネシア貴族女性の雑誌(野中)、日本への朝鮮人留学生が刊行した雑誌(李)、日本女性の満洲旅行(高)、トルコ大統領の養女(宇野)を取り上げ、研究を進めた。「総括・展望」の年である2018年度には、合計5回の研究会を重ねて各自の研究の接合を行った。異文化間での憧れと蔑み、宗主国や先進的文化への憧れと反発、認めたくない憧れも、「新しい女性」のありかたに影響を与えたことなどが確認された。2017年度に招へいしたPamela Cox氏、中野嘉子氏、Lucy Delap氏の論考も併せて研究書として刊行することを目指している。Pamela Cox氏からは、さらに英語での共著刊行を視野に入れた共同研究の申し入れがあり、合意された。
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旅の文化研究所研究報告
巻: 28 ページ: 43-65
https://newwomen2016.amebaownd.com/