研究課題/領域番号 |
16K02005
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
小檜山 ルイ 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (70186782)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ユーラシアン / 混血 / 日米関係 / キリスト教 / アメラジアン |
研究実績の概要 |
本研究においては、第2次世界大戦以降のアメラジアンの研究はある程度蓄積があるとの認識のもと、それ以前の西洋人男性とアジアの女性たちとの性交渉の結果としてのユーラシアンの問題を掘り起こし、それを特に日米関係の中に位置づけることを第一の目的としている。 平成28年度においては、そのために1)2次資料の収集、2)ユーラシアンのためのピース・コテッジを経営した現横浜共立学園における資料調査、3)明治初期に横浜共立学園を設立したWoman's Union Missionary Society for Heathen Landsが残した資料の調査、4)アメリカ合衆国における関連研究のネットワークの構築、5)将来的に第2次世界大戦後のアメリジアンの研究につなげるための人脈の形成をめざした。 1)については、書籍約35冊を購入しただけでなく、アメリカで古書のスキャンを数多く行った。2)については、横浜共立学園資料室で調査を行い、ディジタル化された資料を入手した。3)については4月と11月にアメリカ合衆国の図書館、資料館を訪れ、特にウィートン大学のビリー・グラハム・センターでは、大部の資料をスキャンし、ディジタル化して持ち帰った。4)については、平成29年1月から3月までカリフォルニア大学バークレー校のエスニック・スタディズに客員研究員として所属し、スタッフとの関係を築いた。5)については、11月シカゴ滞在時に、アメラジアンの女性に何度か会い、信頼関係の構築に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は研究休暇であったこともあり、予定していた資料収集の80パーセントは実行できたと考えている。特にウィートン大学ビリー・グラハム・センターに残る資料については、ほぼ渉猟を終えた。ただし、残っている資料に限界があり、本格的資料整理はこれからだが、ピース・コテッジやユーラシアンについての情報は想定したほど保存されていなかった。カリフォルニア大学バークレー校では、日本で発行されていた英字新聞のディジタル・リソースを使用し、「ユーラシアン」をキーワードに検索を進め、1890年代から1941年代まで、在日外国人のコミュニティの間で、ユーラシアンがどのような存在として報道されていたかを調べた。これは、計画とは異なる資料収集ではあったが、ある程度の傾向を検出でき、今後の研究の方向を決めるのに役立った。アメラジアンの女性とのコンタクトは維持しているが、プライバシーの問題などがあり、今後彼女のバイオグラフィーを研究という形にもっていくかどうかは、検討中である。キリスト教系の国際養子縁組組織での資料収集を予定していたが、時間的に第一年度内に行うことができず、次年度以降の課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度は、第1年度に集めた資料の整理と読解をまず行う。同時に、ホルト・インターナショナルとパール・バック財団での調査の可能性を探り、できれば現地調査を実施したい。ホルト・インターナショナルとはすでに連絡を取り始めている。第1年度の調査で、インドにあったWUMSの学校についての情報は入手したが、現地調査をすることは必ずしも現実的でないと判断している。上海で展開されたWUMSの女子教育事業についても同様である。これらの地域におけるユーラシアン対象の教育事業については、ウィートン大学所蔵の英文資料等からの情報を元に把握を進め、日本のピース・コテッジを理解する補助と位置づけたい。そして、第2次世界大戦以前のユーラシアンについての研究の方向性としては、日本の居留地、特に横浜、神戸、長崎を中心に調査を進めようと考えている。第1年目の調査で、一般的にミッション・スクールは、ユーラシアンを受け入れる傾向があったことがわかっているので、いくつかの学校を訪ねて事例を収集するとともに、港町のコミュニティにまつわる記録を収集したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
第1年度の予算はほぼ予定通りに消化したが、14771円ほどの残金を出した。注文した書籍が予定通りに納入されなかったことがあった。
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次年度使用額の使用計画 |
この分は今後納入される書籍代金にあてる。
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