研究実績の概要 |
日本のタイ地域研究は、アメリカから戦後に輸入された学問であり、戦前の日本人のタイにおける知的営為や知的蓄積を参照することなく成立した。しかも、戦前との断絶状態は戦後70年を経た今日まで続いている。本研究では、戦前の渡タイ日本人知識層中、最多数派であった仏教者の渡タイ、換言すれば、近代における南北両仏教の接触が引き起こした諸現象に着目する。第2年度は、初年度に続き、日本人最初の上座部仏教出家者とも言われたこともある岩本千綱に関して、その実際の行動を極力詳細に明らかにすることに努めた。同時に、明治期の訪タイ日本人には、シャムの仏像を日本に請来した者も少なくなく、これらのシャム仏の保存状況についても調査を開始した。第2年度における研究成果は次の通りである。 村嶋英治「1890年代に於ける岩本千綱の冒険的タイ事業:渡タイ(シャム)前の経歴と移民事業を中心に(中)」、『アジア太平洋討究』第29号、2017年10月、141―221頁 村嶋英治「1890年代に於ける岩本千綱の冒険的タイ事業:渡タイ(シャム)前の経歴と移民事業を中心に(下の1)」、『アジア太平洋討究』第33号、2018年3月、153―204頁 Eiji Murashima, “Japanese-Thai Materials and Scholarship Concerning the Second World War”in Essays on Vietnam and Thailand during the Second World War,Waseda University Institute of Asia-Pacific Studies, March 2018,pp.12-24. 村嶋英治「バンコクの日本人(80)~(91)」、『クルンテープ』(泰国日本人会月刊誌)2017年4月~2018年3月
|