研究課題/領域番号 |
16K02015
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
吉川 純恵 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, 研究助手 (50756228)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域研究 / 現代中国 / 中国外交 / アジア周辺外交 / 地方政府 / 対外政策決定 / 東アジア国際関係 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中央・地方関係の変化に着目し中国の対外政策決定の新たな特徴と構造を実証的に研究することである。中国の地方政府はアジア周辺外交において、それぞれの利益を最大化すべく独自の対外活動を活発化させている。第1の研究目標は、地方政府の対外交流のチャンネルと内容を検証し中央との関係を捉え直すことで、中国の対外政策決定の新たな構造の解明に取り組むことである。第2の研究目標は、アジア周辺外交なかでも複数国が関わる開発計画においては、地方政府主導で政策が決定され実施されるようになっており、中央・地方関係に変化が見られることを明らかにすることである。 初年度は、第1、第2の研究目標でそれぞれ単著と英語論文を研究成果として発表することができた。第1目標の中国の対外政策決定の構造の解明として、博士論文を発展させる形で、単著『中国の大国外交への道のり』(勁草書房、2017年3月)を出版した。中国の大国化および対外政策決定に関わるアクターの多元化が国際機関外交の目標の変化をもたらし、二重の性格を持つ対外政策の変化につながっていることを明らかにした。 第2目標のアジア周辺外交における地方政府の役割に関しては、広東省を事例に取り上げ、広東省の海洋経済における発展計画の作成と中央政府との関係性を検証した。地方政府をはじめ、中国の対外政策に利害を有するアクターが増え、権益をめぐってアクター間での競争が激しくなっている。これが中国の海洋政策の強硬化の要因の1つとなっていることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定よりも早く、単著の出版機会を得ることができた。単著の執筆と出版を通して、研究仮説の検証および理論化の作業が進んだ。また、今後の事例分析で明確にすべき点が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、現地調査と海外の学会報告を実施し、事例研究のための資料収集と研究の質向上のための意見交換を中心に行う。具体的には、中国とベトナムなどのアジア周辺国において現地調査を実施し、地方政府関係者と地方企業関係者への聞き取り、大学やシンクタンク研究者との意見交換を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年前期に出産・産休のため研究活動を一時中断せざるを得なかった。当初予定していた中国における現地調査、関係者への聞き取りや現地でのみ入手可能な資料調査を行うことができなかった。研究は日本国内での資料調査が中心となったため、当初予算として計上した現地調査および海外学会報告費を次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、中国北京、広東省、広西チワン族自治区、さらにベトナムでの現地聞き取り調査と資料収集を行う。また、海外と国内の学会報告を実施し、研究成果の中間報告を行う。
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