研究課題/領域番号 |
16K02016
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 恵美 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, その他(招聘研究員) (00535437)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地域研究 / 政治史 / 中東 / 議会 / イスラーム / 名望家 |
研究実績の概要 |
本研究課題の3年目の課題は、司法エリートと政治の関係の考察である。特に2011年から2013年にかけての体制転換期において、従来ムバーラク政権の権威主義的政策に対峙し抵抗する存在であった裁判所が、なぜ2011年のムバーラク政権の崩壊を機に自立的に政治化し、最終的に2013年のスィースィー政権の誕生の際には国軍と警察と協調して、軍政を支える役割を果たしたのか、司法エリートに着目して考察した。対象としたのは最高憲法裁判所と行政裁判所である。成果の第一は、現代だけでなく20世紀初頭にエジプトが近代国家としての枠組みが整備されて以降、政治が麻痺状態あるいは無政府状態に陥った時などには、司法がなかば自発的に政治的役割を負ってきたことを、過去の事例を具体的に示すことで明らかにした。その背景には、両裁判所の判事の出自が、国会議員などの政治家を代々輩出するような名望家出身であるなど、元来政治と司法の距離が近い関係にあることが要因のひとつとして挙げられた。また、このような家系は傾向としてムスリム同胞団に代表されるイスラーム主義勢力とは一線を画す関係にあったことも、過去の名望家出身の議員のデータベースを用いて立証した。この成果の一部はミネルヴァ書房から刊行される政治学選書シリーズの「エジプト」のなかのひとつの章『衛兵国家エジプト』のなかで執筆した。なお、この書籍は令和元年度に刊行予定である。 また平成30年度は、予想外の研究の進展も見られた。王制期の支配層の中核を形成した大地主で占められたワフド党の設立に関わり、副党首を長期間務めたハムド・バースィルの直系の子孫から、19世紀後半の裁判文書の写しを入手し、この一族の長老らから聞き取り調査を実施することができたのである。この度収集することができた史料は、併せて令和元年に考察の対象とすることで本研究課題のまとめにつなげていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
司法エリートに関する研究について、計画通りに進展した。聞き取り調査も概ね計画通りに実施した。アラブ部族系の名望家に対する聞き取りについては、当初の計画以上の大きな成果を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度にあたる平成31年度(令和元年)は、成果を書籍として刊行する準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたディンシャワーイ博物館における調査が、博物館長が不在のため計画通りの回数を実施することができなかったため。これは平成31年(令和元年)年度に実施する予定であえる。
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