研究課題/領域番号 |
16K02017
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研究機関 | 長岡大学 |
研究代表者 |
權 五景 長岡大学, 経済経営学部, 教授 (20341993)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域資源 / 地理的特性 / 地域格差 / 需要産業 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、同質的条件の下にある異なる地域間において工業力の差が生まれる理由について分析することである。 初年度は欧州9か国の工業都市を訪問した。同質的条件下の複数の都市を設定するのは難しかった。それで、まずはかつて成長をけん引していた都市または現在発展中の都市を訪問した。そこで分かったことは、ドイツのエッセンのように、天然資源を活かして経済発展を可能にした地域もあれば、ベルギーのヘント(麻)、イタリアのコモ(養蚕)のように農産物を活用し今日の大発展のもとを作り上げた地域もあった。また、東欧ではあるが、スロヴェニアのイドリア地域はかつてからの水銀鉱山や工業学校の歴史があり、その上、他の東欧の都市よりも立地的に西欧に近かったという地理上のメリットをうまく活かせた事例に会うこともできた。新鮮だったのは、チェコのピルゼンで、世界で最も普及されているピルスナービールと、東欧を代表する自動車シュコダの発祥地であることだった。前者はドイツとの人的交流によって、後者は戦争からの需要によったと聞いている。もう1カ所はスイスのバーゼルであり、スイス製薬業のもとは繊維産業とりわけ染料作りだったということである。現在、スイスの製薬産業は世界で2番目に競争力が高いが、そのもとが染料づくりだということには驚かざるを得なかった。 初年度の研究成果としては、日本も欧州も国家ではなく地域の経済発展のパターンは似通っていることが確認できたことである。一つは地域資源の活用であり、もう一つは需要に応えていく中で経済発展の水準が高まっていくという点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フィールド調査は予定通りに進んでいるが、文献研究や統計分析がやや遅れている。 その理由だが、ゼミナールの活動に多くの時間が使われているからである。ゼミ活動が多岐にわたるようになり、少しずつではあるが成果が出ている。その活動が地域社会から注目されるようになっており、かなりの時間が使われたためである。ただこれも地域資源(酒粕、十分杯)を活用するものであり、本研究を実社会に応用したものと言える。
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今後の研究の推進方策 |
事例探しのためのフィールド調査は地域を変えながら初年度と同じ方法で進めていきたい。 文献研究は今のところかなりの時間を使っている。地域資源と関連する西欧諸国の産業史はある程度は抑えているので、これからは地域資源を活用した地域企業の事例を見つけたい。課題は統計分析だが、これからデータを集めて丁寧に分析を行うのみである。
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