研究課題/領域番号 |
16K02017
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研究機関 | 長岡大学 |
研究代表者 |
權 五景 長岡大学, 経済経営学部, 教授 (20341993)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域資源 / 地域企業 / 地理的特性 / 地域格差 |
研究実績の概要 |
①先進企業が多い地域ほど地域の発展度合いは高い。②その先進企業とは過去の創業期において、地域資源を有効に使った企業または、地域の難題をうまく解決できた企業であり、何らかの形で企業の成長に貢献してきた、というのが本研究の仮説である。 上記のような考え方の下で、実際、日本を対象として、人口当たりの先進地域企業数と地域の個人所得を調べてみた。その結果、①の仮説の両者間に正の比例関係が確認できた。また、②日本の上場企業の多くは先進企業であることが確認できた。一方で、韓国は工業化が遅れたことが原因とみられるが、日本で確認できたことが韓国では殆ど確認できなかった。 また、アジアに比べ工業化が先行した欧州9か国を訪問し、下記の事例を確認できた。 第1に、世界最初の紡績工場を経営したR. Arkwrightと世界最初のコークス製鉄法を開発したA. Darbyについての調査から「地域外部からの情報獲得」+「地域資源(前者は水力、後者は石炭)の活用」という共通点がある。また、蒸気機関は炭鉱の水を汲みだすために開発された。第2に、デンマークは世界的なデザイン企業が多いが、その背景に寒い冬に室内で過ごす時間が多くなり、自ずとインテリアと家具関連産業が発展するようになった。また、風力発電トップ企業は元々は世界的な農機具メーカーであり、従業員の殆どが農村出身だったことがその背景にある。第3に、ハンブルク企業の多くは輸入産業であるが、バルト海とエルベ川が流れるからである。第4に、オーストリア西部の山間部には世界的なガラス加工企業が2社あるが、アルプス山脈の豊富な水力発電、パリやウィーンへの交通アクセスの容易さ、集積地からの遠いという地理的理由がある。第5に、ロッテルダムは欧州最大の貿易港があり、世界的企業の本社も複数あるが、ハンブルク同様ライン川と北海の接点であるという地理的特性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールド調査はおおむね順調に進んでいる。現代産業の源流が多いヨーロッパの都市を中心として行ってきたが、これまで気づいていなかった多くのことについて勉強ができたことは実に有益である。現地調査後、日本に戻ってから現地調査をバックアップする形で地理や歴史を中心とした文献研究を進めてきた。 また、企業の誕生や成長の過程において地理的特性が非常に大事でありながらも既存の研究はそれをないがしろにしてきた側面がある。本研究は事例発掘を中心としてそれを是正するための基礎研究になることを目指す。 このように、地理的特性から企業誕生と成長を紐解くという新たな見方を確立するという楽しさがあり、楽しく研究に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
経済学において、地理的特性は大事にされない。価格に影響を与えるわけではないからである。しかし、実社会では起業は地理的特性に依存するというきらいがあることがこれまでの研究で分かった。欧州の先進地域の先進企業がいかなる過程を通して世界的な企業にまで成長できたかをより丁寧かつ綿密に調べていきたい。それをもとに、先進企業の条件について丁寧に調べていきたい。
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