本研究は、体制形成期の北朝鮮における言語規範化をめぐる政治文化史的な研究であり、言語規範化のより総合的な研究(事業A)と金壽卿という研究者を中心とした事例研究(事業B)によって構成される。 事業Aについては、北朝鮮の言語規範化プロセスに関して、総合的にまとめる最後の作業が進んだ。2019年度には1960年代の言語浄化に関する研究が韓国で公刊されたほか、初期言語理論に関する研究が進展した。こうした研究により、1945年以降の北朝鮮の言語規範化(識字運動、漢字撤廃、正書法改革、言語浄化)に関する研究が一通り揃い、あとはこれをまとめて1冊の書物として刊行する作業だけが残った。 事業Bについては、単行本(単著)の草稿を出版社と検討したところ、大幅な改稿が必要となり、その作業を進めた。中身は全て揃っているが、学術史・政治史・個人史が混在した内容を読者にしっかり伝えるために、構成上の工夫が必要なためである。そのため単行本は2019年度中にも刊行することができなかったが、2020年度中には刊行できるものと考えている。2019年度中には韓国の専門家や大学院生の前でも金壽卿および北朝鮮文化史に関連した講演をおこない、有用なフィードバックを得た。 なお、2019年度の年度末に、小規模の公開シンポジウムの開催を計画していたが、企画を詰める最終段階でCOVID-19が拡大したため、とりやめることになったことを付記しておく。
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