2022年度も本研究課題が重視した中国での現地調査を実施することはできなかった。その理由は中国政府が推進したゼロコロナ政策による渡航制限および中国の政情不安である。後者は外国人研究者が中国国内で宗教問題や民族紛争に関する現地調査を行うことに大きな危険を伴うことを意味する。したがって、研究課題を十分に遂行することが困難な状況であったことは大いに悔やまれる。 そこで、調査地域を国内に絞り、イスラームと仏教に関する各種調査を実施した。イスラーム関連では、9月に別府マスジド(大分県別府市)、善隆寺(大分県中津市)にて九州北部における外国人ムスリムの信仰生活を観察し、仏教寺院によるイスラーム土葬墓地開設支援活動の聞き取り調査を行った。3月に名古屋モスク(名古屋市)にて、中京地域におけるムスリムの活動と日本社会への適応について調査した。 仏教関連では、6月に岸和田城資料館(大阪府)、10月に水口歴史民俗資料館・土山歴史民俗資料館(滋賀県)、11月御津町郷土歴史資料館(岡山市)、1月孔子廟・崇福寺(長崎市)にて土着宗教、中国・朝鮮半島由来の宗教活動に関する歴史資料を入手し、主に日中宗教交流について考察した。 その他、雑誌「中国宗教」「中国ムスリム」「中国民族」「中国西蔵」に掲載された記事から、中国共産党の宗教政策、宗教事務管理、少数民族政策、宗教と和諧政策、中国共産党全国大会、イスラームマスジド(清真寺)、チベット仏教寺院、カトリック教会、プロテスタント教会、宗教の慈善活動に関する情報を収集し整理した。
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