体育領域の中でダンス指導に対する男性教員の消極的な姿勢は長年指摘されており,その主な理由の一つとしてダンスを「女性的なもの」と見なすジェンダー・ バイアスが挙げられてきた。本研究は研究者がこれまで行ってきたダンスのジェンダー・イメージの初期的理論研究を踏まえ,質・量共拡充した調査を行い,半世紀以上にわたり続いてきたダンスに対するジェンダー・バイアスを克服する新しい理論の構築を目指すものである。
本年は,これまでの研究を総括し,研究成果の発信を行った。スポーツ・ジェンダー学会第17回大会において、「ジェンダーの視点からみたダンス教育」と題する分科会を設けることにした(司会:猪崎弥生、登壇者:酒向治子[岡山大学]・宮本乙女[日本女子体育大学]・竹内元[宮崎大学])。ジェンダーの観点からダンス教育に 内在する課題に着目し,情報を発信すると共に、この課題に興味を有する国内外の研究者達と議論を行った。酒向(本研究代表者)は,ダンスの根強いジェンダー・バイアスを克服するために本発表者が取り組んでいる具体的な二つの試みについての報告を行った。一つは,性別に関係ないダンスの方法論として,ルドルフ・ラバンに基づくLOD(Language of Dance)アプローチにおける身体表現教育の授業であり,もう一つは,動きの技能にとらわれない「即興」アプローチを用いた身体表現教育の授業(「身体表現学」)である。
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