研究課題/領域番号 |
16K02040
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
増田 仁 熊本大学, 教育学部, 准教授 (80510560)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ジェンダー / 歴史社会学 / 家政学 / 家庭科 / 教育社会学 |
研究実績の概要 |
『社会学評論』への投稿を行った。論文では、日本の高度経済成長期における農村の家庭科教育や生活改善普及事業に焦点を当てながら、学校や地域が生徒や農村女性を家事労働者へと回路づけ続けていく過程と女性たちはどのように家政学的指導を受け止め、時には読み替えながら生活を変容させていったのかを分析した。家庭科教育は「生活改善」を御旗に掲げながら、家庭内の葛藤をも増幅しかねない家事労働者へと生徒を導く傾向を孕んでいた。一方生活改善普及事業は、「合理的」な生活を農村女性に示し、主体性を促しつつも、女性たちは事業の理念を読み替えたりすることで、自分たちの楽しみを見出していく。生活の統治過程とそれに対応してきた女性たちの姿を浮き彫りにした。用いたデータは以下のとおりである。雑誌『家庭科教育』『家庭クラブ』や旧文部省発行のホームプロジェクトの手引書、生活改良普及事業の記録や記念誌等の文献資料から政策実施までの社会的背景や実施状況、家庭科教育に関しては生徒やその親、生活改良普及事業に関しては農村女性が家政学的指導をどのように受け止め、生活現場で実践していったのかを見ていった。また、生活改良普及員および家庭科教員経験者へのインタヴューデータから、文書資料には書かれない指導現場の実態、特に指導が生徒や農村女性に貫徹しない時の指導方法の変更や指導対象者の諸対応に着目しながら分析していった。さらに家庭科の戦後史に関する先行研究や一次資料を読み直す過程で、初学者にもわかりやすい文章にまとめ、共著で家庭科のテキストを執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献の検討や論文の作成は順調に進み、『社会学評論』への投稿もしたが、まだ掲載には至っていないため。今年度はインタヴュー調査および資料収集を進めながら、同時に論文掲載のための修正を行っていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
地域調査を行うため、インフォーマントへの調査協力依頼と信頼関係の構築をしていかねばならない。授業や校務をこなしながらフィールドワークを行うため、時間の確保が課題である。土日には九州での調査を行い、夏休みや冬休みを利用して東北地方の調査を進めていく。インタヴューデータのテープおこしは外注するなど、効率的に研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍の購入が予定より安価にできたため。
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次年度使用額の使用計画 |
資料のコピー代と書籍代に使用していく。
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