研究課題/領域番号 |
16K02041
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研究機関 | 神戸市看護大学 |
研究代表者 |
藤井 ひろみ 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (50453147)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 同性カップル / 生殖補助医療 / 家族形成 / セクシュアル・マイノリティ / SOGI(性的指向・性自認) / LGBT |
研究実績の概要 |
本年度は、遅れていた縦断調査の倫理審査受審後に、対象者のリクルートを開始した。またこの間、日本国内でも同性カップルをめぐっては、当事者による国を相手とした集団訴訟が提起されるなど、本研究の背景となる国内情勢にも大きな変化が見られた。こうした状況の変化を踏まえ、調査内容として当初の計画であった、基本データ[年齢、職業、学歴、経済状況、居住環境、家族構成]と、家族関機能測定尺度(草田,岡堂,1993)と対人ストレスイベント尺度(橋本,1997)、及び①婚姻状況(同性婚のある国の場合。日本においては居住地域での関係保証の有無)、②カップル間のジェンダー(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの組み合わせ、自己認識上のジェンダー)、③子の有無、④子を持っている場合または持とうとしている場合の(生殖補助医療の治療歴、養子制度の活用、妊娠経過・分娩経過、母子健康手帳の記載内容)のうち、尺度をSTAI及びより同性カップルに焦点を当てるために異性愛者を想定して作られたカップル関係尺度を改変したものとし、独自の調査用紙を作成することとした。 また同時期に研究者が関わった「大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート」(科学研究費助成事業「性的指向と性自認の人口学-日本における研究基盤の構築」研究代表者 釜野さおり)を通じ、性的少数者の家族背景に関する調査手法の探索と、同調査の結果を本研究の対象者の家族関係と照合することが可能となった。同調査は、性的指向・性自認に関する日本語、英語、韓国語、ベトナム語での質問時の表現の組みあわせなど本分野のwordingを検討する上で、本研究と関連している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、最終的な有効回答数を3~5組(日米ペア合計で12~20人)となることを目指しているが、現在までのところ研究参加者は日本国内の3組にとどまっている。またカップルの一方のみ、もしくは、家族背景が複雑化しており、3人親のうちの1名等の事例も見られる。本調査により、対象者の家族関係の複雑性が明らかになることは、成果につながると考える。しかし一方で、分析の複雑化も予想され、新たな課題となる。 また、研究参加者及び候補者のほとんどが、すでに第一子を得ており、目下「挙示希望」である研究参加者は得られていない。こうした対象者の偏りが、リクルート方法によるものかどうかの検討を加えることも課題である。 さらに、日本国内での調査に比して、米国での調査は研究協力者は得られたものの未だ着手できず遅れている。 以上のことから、「やや遅れてる」とした。研究調査(縦断)期間は当初4~5年の計画であったが、現状では2年間となる。このため、本研究期間終了後の研究継続の検討を視野に入れ、更なる研究計画につなげていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在までのとこと、国内で調査協力が得られた研究参加者の縦断期間中の「脱落」の恐れは少ないと評価している。このため現在の3組を5組程度に増やすことを目指す。また遅れている米国調査の実施よりも、国内での研究参加者数を増やすことに計画変更する。その理由は、「研究実績の概要」でも述べた日本国内における同性カップルへの注目度から、今後本分野の調査データへのニーズが高まることが予想されること、また、国内ニュース等を通じて、当事者側の家族形成ニーズの掘り起こしが進む可能性もあり、この機に日本国内のデータを収集しておくことは歴史的に見ても重要であると、考えられたためである。 そのため「進捗状況 理由」で述べたリクルート法を見直し、多様な対象者により多く出会えるようにして、当初計画の調査対象者目標数(20人)を国内データとして収集する。 また縦断期間を年単位のみにとどめず、1年間の変化について分析し、逐次成果を公表していくことも、次年度の研究推進内容であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国での調査の実施について検討したことから、米国旅費分の執行を一旦中止したため。またこの分は、次年度に国内での調査に振り分けることとし、国内旅費として執行予定である。
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