本研究はビジネスの分野における女性の活躍を推進する要因を見出すため、スウェーデンとデンマークを中心としたヨーロッパ諸国の事例と日本の状況を、1)政府の施策(雇用・ジェンダー・福祉);2)企業のマネジメント施策及び組合の関与;3)家庭における家事・育児などの家庭役割の分担の在り方、のそれぞれ3つの分野から比較分析・考察した。 本年度は最終取りまとめとして、研究期間に行なったフィールド・リサーチで収集したスウェーデン女性のライフ・ヒストリー・インタビューのデータを中心に、1)国際学会での発表(2019年4月 BSA)、2)論文執筆(”Gender (in)equality in business and countries welfare systems" 2020年7月、"Japan Forum"に投稿予定。)を実施した。 女性のキャリア形成とビジネスの分野での活躍を促進・支援するためには、1)女性の経済活動参加への政府の積極的な促進及び活用のためのイニシアチブ、及び実効性のある労働施策及び福祉システムの構築;2)家事・育児などの家庭責任の夫婦・パートナー間でのより均等な分担;3)そしてジェンダーに関わらず社員が家庭責任を果たすことのできる労働環境の提供と家庭責任を担う社員に対するペナルティの発生しない人事政策、の全てが整うことが必須であることが見出された。これらの女性を取り巻く経済・社会環境を土台に、男女平等の教育と文化、家庭内での共通意識が形成され、女性自身が仕事とキャリア形成を自然に志向し実現することが可能となった。対象各国では1960年代の労働力不足に対応するために長い年月をかけジェンダー平等の社会経済システムを構築しており、今後日本が女性の経済分野への参加と活躍を真に促進するためには、国と企業、そして社会におけるジェンダー意識の変革を積極的に実施する必要がある。
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