研究課題/領域番号 |
16K02046
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
赤松 淳子 文京学院大学, 外国語学部, 准教授 (60723004)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 結婚の破綻 / 感情 / 交渉 |
研究実績の概要 |
本研究は18世紀イングランドにおける夫婦間の別居訴訟に関する記録から、当時の妻たちが自身の婚姻上の利益をどのように追求しようとしたのかを、男性の法専門家やアドバイザーの働きをとおして明らかにする試みである。 2020年度は、訴訟当事者や法専門家が夫・妻の婚姻上の権利をどのように捉え、その権利に対する考えをどのように変化させていったのかを考察するために、訴訟に関わった者たちの「感情」に注目しつつ研究を進めた。過去に別居訴訟(虐待訴訟)の記録から文化規範と両性の感情を考察する論を発表したが(伊東剛史・後藤はる美編『痛みと感情のイギリス史』東京外国語大学出版会、2017年所収)、ここ数年の間にも「感情史」の諸研究が相次いで出版されており、それらを取り入れてプロジェクトを進める必要がある。 「結婚の破綻」(特に配偶者の姦通を理由とする)および「妻の権利」についての言説の分析を次の二段階に分けて行った。まず近年の「感情史」研究のなかでも、法・感情・ジェンダーの関係に注目した諸研究の論点を整理した。次に、感情史の手法を用い、18世紀の結婚の破綻をめぐる一次史料を分析していった。家族文書を対象として妻が法的交渉においてどのような感情の維持・働きかけ・創出を必要としたのかを読み取る作業を行った。同時に、男性の法専門家たちに共有されていたジェンダー秩序観とその変化を明らかにするために、弁護士の手稿と裁判記録を再度読み直した。 18世紀のチャムリー家の結婚の破綻をめぐる交渉の記録について、歴史人類学会で報告した。発表を通じて18世紀の文脈において「姦通訴訟」を起こす意味について再考し、今後の研究の方向性を探ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ・ウイルスの感染拡大の影響で、訪問を予定していたイギリスの文書館が閉館となっており、史料調査を実施することができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
訪問を予定しているイギリスの文書館の開館時期が定まっておらず、2021年度も現地での一次史料調査を実施できない可能性がある。別居訴訟と私的交渉をめぐる事例研究の史料があと数件必要であるため、開館を確認次第、現地のスタッフによる史料撮影と送付サービスが可能かどうかを問い合わせる。18世紀の男性専門家やアドバイザーの働きを促した感情の土壌を明らかにする研究は、これまでに入手した一次史料と二次史料にオンラインデータベースの一次史料を加えることで、ある程度進めることができると考えた。2021年度は感情史とジェンダー史が交叉する領域にこの問題を位置づけ、国内外の学会において研究成果を発表するとともに論文執筆を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
一次史料調査のための旅費に充てていたが、新型コロナ・ウイルス感染拡大により、渡英できなかった。2021年度は、状況をみながら可能であれば旅費に使用する。難しい場合は図書購入等の物品費に充てる。
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