研究課題/領域番号 |
16K02046
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
赤松 淳子 文京学院大学, 外国語学部, 准教授 (60723004)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 感情史 / 手紙史料 / 家族 |
研究実績の概要 |
本研究は、18世紀のイングランドにおける夫婦間の別居訴訟に関する記録から、当時の妻たちが自身の婚姻上の利益をどのように追求したのかを、男性の法専門家やアドバイザーの働きをとおして明らかにする試みである。 2021年度は以下の二種類の作業を行った。ひとつは結婚の破綻について書かれた手紙史料を別居訴訟の記録と突き合わせ、感情史の視点から読み直す作業である。昨年度まで取り組んでいた18世紀のチャムリー家の結婚の破綻について、イギリス女性史研究会(6月開催)にて発表する機会を得た。訴訟当事者の「家族」(特に女性当事者の父親)の役割について考察することができた。また、法をめぐる上流層の女性の経験に関する考察を関西ジェンダー史カフェ(7月開催)での報告をとおして発展させることができた。これらの研究会で得た知見をもとに論文を発表した(『歴史学研究』1016号、2021年11月)。 もうひとつは結婚の破綻に関するメディア上の言説を読み解くための視点を築く作業である。同テーマに関してはこれまでいくつか論文が発表されている。それらを「感情史」の視点から再度読み直し、論点整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍にあり2021年度は渡英が難しく、現地の文書館での調査を進めることができなかった。それゆえ2018年度までに現地で収集した史料に加え、日本からオンラインでアクセスできるメディア史料を取り入れながらプロジェクトを進めていく。最終年度に向けて史料の読解と分析に進む準備を整えつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの作業をまとめる段階に入る。感情史から18世紀イングランドの別居訴訟とメディアにおける言説の展開を分析することが目標である。これまで複数の史料を読み、個別に論を発表してきたが、それらを貫く論を提示する。別居訴訟に携わった男性専門家とアドバイザーの範疇に「メディアの先導者」を加えることができるかどうかを検討し、18世紀の結婚の破綻における感情のダイナミズムを見出していく方向性を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
イギリス現地での調査費・旅費にあてることができなかったため、年度内に使い切ることができなかった。2022年度は主として書籍の購入にあてる予定である。
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