本研究は、移住者が渡航先で身につけた習慣や価値観を出身地に伝える行為である社会的送金に着目し、それを出身地における開発に活用するための条件を明らかにすることを目的としている。ネパールを直接的な調査対象とするが、事例研究を通じて、社会的送金を開発に活用しようとする際の出身国・受入国の政策や、国際移住機関等による支援事業に対して一定の普遍的な示唆を与えることが本研究の最終的なねらいであり意義である。 ネパールからの移住先としてジェンダー規範がそれぞれ異なる日本、クウェート、マレーシアを選び、現地在住ネパール人の調査を行う他、これらの国々から ネパールに戻った帰国者とその家族の調査と、キー・インフォーマント・インタビューを行っている。 日本では、2016年度から継続して群馬県と東京都で個人を対象に調査を行ったほか、新潟県、沖縄県、愛知県、福岡県、埼玉県で在日ネパール人社会のキーパーソンから、各地のネパール人組織に関して聞き取りを行った。2018年には子どもの教育資源に関して補足調査を行った。 マレーシアでは、2016年6月と12月に85件のデータ収集を行い、2018年8月に質的調査を行った。クウェートでは、2017年3月の現地調査で71件のデータ収集を行った。ネパールでは、2016年11月にマクワンプール郡で帰国者および家族から240件のデータを、2017年10月にはナワルパラシ郡で26人のデータ収集も行った。2018年は、3月にネパールで報告会を行ったほか、スリランカやモルディブで暮らすネパール出身者にも聞き取りを行い、渡航先による違いを考察した。 2017年には研究協力者のチャリマヤ・タマンさんを招聘し移住労働に関する意見交換を行った。2018年には国際開発学会「人の移動と開発」研究部会と共催で「移住に関するグローバル・コンパクトの可能性と課題」と題した研究会を開催した。
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