本課題は、日本の性産業の変容と新たな形態の生成過程の時期にあたる1950年代から1970年代までを対象に、愛知県と東京都の性産業地のあり方を検討し、性売買構造の連続性と変容を解明しようとしたものである。 2021年度は、1950年代から70年代全般の史料収集と分析を行った。研究代表者は、豊橋市中央図書館、豊橋市議会事務局、豊橋市役所、名古屋市鶴舞中央図書館等で調査を行った。研究分担者は、東京都公文書館の所蔵史料に関する調査、および東京都立中央図書館、墨田区立ひきふね図書館で調査を行った。 また、研究代表者と分担者は、2021年5月、9月、2022年2月に各1回、3月に2回、オンラインで、今後の研究方針の検討や、研究成果の共有・議論を行った。研究の結果、研究代表者は、1950年代に豊橋で浮上した、特飲街の移転問題の経緯を検討する論文を発表した。研究分担者は、性売買を含めた、日本近現代史のセクシュアリティに関する概説記事を執筆した(2022年度刊行予定)。 研究期間全体を通して、特に売春防止法成立前後の時期の地域史料を発掘し、当該期の愛知・東京の性産業地の変化を、業者の動向や地域政治との関連を含めて明らかにすることができた。1960年代および70年代については、各地域および全国レベルで作成された史料の発掘調査によって、性売買に関する制度の変化に伴い、性産業の性質も大きく変容し、史料の生成の有り様も変質したことを確認することができた。
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