研究課題/領域番号 |
16K02057
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
斎藤 真緒 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (70360245)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 家族介護 / 介護殺人 / 男性性 / 介護者支援 |
研究実績の概要 |
介護殺人予防をめぐって、まず、実際に生じてしまった介護殺人の裁判記録の収集を行った。研究目的での開示は、各担当検察庁による対応が異なるために閲覧が難しい場合が多く、現在までに2つのケースの記録を入手した。 また、その分析方法について、加害者自身の家族意識がどのように表現されているのかを焦点化する方法として、「動機の語彙」(C.W.ミルズ)という考え方に注目し、それにかかわる先行研究についてサーベイを行った。 さらに、介護殺人の傾向を明らかにする方法として、ケア関係を基盤として生じた殺人事件として、親による障害児者殺し事件に着目し、この事例に関する先行研究を収集し、分析を行った。介護殺人と障害児者に対する殺人の傾向としては、家族によるケアを自明視していく家族意識・社会規範をめぐる問題や、制度・政策の展開と殺人の推移の相関関係といった共通点を抽出した。逆に相違点としては、障害児者殺人の加害者は母親(女性)に集中しているのに対して、介護殺人の加害者は男性に集中している点である。この点については、家族介護を取り巻く環境とジェンダー意識(男性性)が関連していると想定できる。この点については、caring masculinities(ケアにかかわる男性性)という概念に注目し、その先行研究をサーベイした。とりわけ重要な点としては、単なる男らしさ(覇権的男性性)とのとの対立物としてcaring masculinitiesを捉えるだけではなく、一続きのものとして捉える視点が重要であるということである。 最後に、男性介護者のピアサポートの拡大にかかわる実態調査を実施する準備段階として、インターネット上で活動を把握できる団体を調査し、リスト化を行った。2012年に行った時に45団体あったが、さらに9団体新たに団体活動を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
殺人事件の裁判記録の収集が難航しているため、加害者の意識や支援のためのポイントの分析が遅れている。 また、本来であれば、2017年3月に、アメリカの男性学会で成果の発表を予定していたが、家族の介護事由からキャンセルすることとなったため、研究成果のアプトプットが遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
殺人事件の記録については、裁判記録の収集に尽力するが、それのみならず、新聞・雑誌記事までその対象を広げて収集することとする。 また、男性介護者のピアサポート団体の広がりについて、前年度行ったリスト化をもとに、アンケート調査を実施する予定である。 研究成果のアウトプットの遅れについては、10月に国際学会で発表を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度国際学会に参加できなかったため、旅費等の利用計画がずれた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は国際学会での発表が確定しているので、予定通り執行できると考える。
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