研究課題/領域番号 |
16K02057
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
斎藤 真緒 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70360245)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 男性介護者 / 介護殺人 / ピアサポート / 家族主義 |
研究実績の概要 |
本年度は第一に、インターネット検索で、全国に男性介護者の集い・会がどの程度拡大しているかを調査した。2012年段階では約100団体であったのが、2017年9月時点で、150団体にまで拡大していることがわかった。また主宰者の属性についても、当事者だけではなく、行政(福祉課、男女共同参画課、地域支援包括支援センター)、さらには市民団体・NPOなど、多様化していることも明らかになった。2017年10月には、オーストラリアで開催されたInternational Carers Conferenceにおいて、介護殺人予防に向けた男性のピアサポートの可能性について報告を行った。この会議では、初めて、男性介護者に特化した分科会が設定され、男性介護者研究についての世界規模での認知にも貢献できたと考える。また、昨年刊行されたInternational Journal of Care and Caringに投稿された男性介護者に関する論文の査読を行った。 介護者支援の世界的な進展が、ヨーロッパ・北米中心に進展しているのに対して、家族主義的福祉政策が根強いアジアにおける包括的な介護者支援のあり方を構想すべく、2017年8月には韓国で研究者との交流を行い、ネットワーク構築を図った。そして2018年3月に、韓国と、台湾の研究者および介護者支援団体の代表を招いて、「東アジアの介護実態と男性介護者」という国際シンポジウムを開催し、私も報告を行った。アジアの先進国としての日本というポジションが、福祉や家族政策の分野でも揺らぎつつある現実が明らかになると同時に、介護保険制度・年金制度の不備を抱える韓国、日本・韓国以上に急激な少子高齢化が進む台湾という、アジアの多様性も明らかになった。家族による介護が広がる一方で、各国でどのような社会的矛盾が表出しているのか、今後継続的に明らかにしていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子どもがまだ小さいために、宿泊を含む出張による調査などの実施が難しく、具体的な男性介護者のピアサポート活動の視察は実施できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年9月から、学外研究制度を利用して、イギリスに1年間滞在することが確定しているので、イギリスを中心とするEUでの介護者支援の最先端の調査研究と実践について調査することができる。海外では、「介護殺人」は、ネガティブに、アジアの家族主義的な価値観と結びつけて理解されることが多く、学会でも驚きをもって受け入れられる。 しかし、オランダなど、一部のヨーロッパの国では、安楽死が合法化されており、その背景に、家族によるケアの負担があると想定される。本研究課題の当初は想定してなかったが、次年度は、アジア的な介護殺人と、海外の安楽死等の違いや共通点についても、検討したいと考えている。文化的な背景の違いを際立たせることで、日本の介護殺人の輪郭をより明確にすることができると考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
子どもが小さいため、宿泊を伴う調査出張を行うことが難しかったため。 次年度はとりわけ9月以降、学外研究期間に入るために、今年度よりも研究に専念する時間が確保できる予定である。
|
備考 |
「子ども・若者ケアラー」『京都新聞夕刊 現代のことば』2017年9月12日 「ケアラー支援」『京都新聞夕刊 現代のことば』2017年11月21日 「受援力」『京都新聞夕刊 現代のことば』2018年3月26日
|