研究課題/領域番号 |
16K02058
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研究機関 | 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館 |
研究代表者 |
吉良 智子 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, リサーチフェロー (40450796)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人形 / ジェンダー / 近現代 / 日本 / 受容 / 身体 |
研究実績の概要 |
近代化の過程において「人形」が「女児文化」に位置づけられ、「女性にふさわしいもの」とみなされた歴史に着目し、ジェンダー論および身体論を援用しながら、現代における「人形」の創造とその受容の様相の解明を目指した。 本年度は、昨年度の研究報告「「あるべき」女児用人形とは何か―「妊娠」した女児用人形をめぐって」(イメージ&ジェンダー研究会ミニシンポジウム「孕む身体表象―その身体は誰のものなのか?」於武蔵大学、2016年9月17日)での質疑応答を経て、ブラッシュアップし、論文化(「「あるべき」女児用人形とは何か―「妊娠」した女児用人形をめぐって」山崎明子・藤木直実編著『〈妊婦〉アート論―孕む身体を奪取する』青弓社、2018年)した。 本論文では、明治初期から現代までの人形表象を、「妊娠」をキーワードにジェンダーの視点から分析を行なった。前近代において必ずしも女性文化に位置づけられなかった人形は、国民国家形成において女性の国民化に必要だった良妻賢母主義と結びつき、その媒介として赤子的身体を持つ人形が、女児たちに与えられた。しかし戦後登場した女性的身体を持つファッションドールは、妊娠可能な身体を形成していた。妊娠可能な人形の身体と処女性を求められる少女との矛盾した関係性は、現代社会における不均衡なジェンダー構造を浮かび上がらせることを論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の口頭報告をさらに精緻に検討を行なった上で論文化できたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ケーススタディとして近代の女性人形作家に関する考察を行ないたい。「人形」に関わる今日的な概念は近代になってから構築されたものであることを念頭に、女性の創作物が経済システムの中で不可視化・無価値化・低廉化されてきた可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は未入手の文献購入はかなり行なったものの、遠方への調査よりも、近郊での調査が多くなったため次年度使用額が生じた。次年度は、遠方への調査を中心に取り組む予定である。
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