研究課題/領域番号 |
16K02060
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
李 恵慶 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20648737)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 慰安婦表象 / 戦争 / ジェンダー / ナショナリティ / 文化的記憶 / 身体/国家 / 政治的無意識 |
研究実績の概要 |
本研究課題は戦後、東アジアの文化空間において「従軍慰安婦」はどのようにまなざされ表象され想起されてきたのか。そしてそこにはどういった政治的無意識が働いているのか。日本・韓国・台湾(中国)の「慰安婦」表象におけるジェンダー・ナショナリズムの力学と政治的無意識とを、様々な文化的生産物における文化的記憶から比較分析し、ひいては東アジア諸国と日本の間の相互理解増進の一助としようとするものである。 研究初年度に当たる今年度は、今後の円滑な研究のための基礎作業を行うことが主な目的であった。そのため、まず国内外へ出張を行い、日本・韓国・台湾(中国)の最近の研究動向を把握しつつ、先行研究や分析対象となる1次資料(「従軍慰安婦」を主題化した文化生産物)および2次資料(新聞・雑誌の記事等)を含む様々な資料を集めるとともに、他の研究者らとの打ち合わせや自主研究会を通じて意見・情報を交換しながら今後の研究について議論した。 また、それをもとに先行研究の分析と「従軍慰安婦」表象史の構築に取り掛かった。なかでも1990年代初頭、元慰安婦ハルモニらによる証言や訴えを境にどのような変化を見られ、今日に至っているのかを通時的かつ共時的に比較分析する作業に重点を置いて、日本・韓国・台湾(中国)の文化生産物における「従軍慰安婦」の表象と言説を、時系列・ジャンル別に体系化し、その変容を調べた。分析はまだ途中の段階であるが、その結果を手がかりに今後の具体的なテクスト分析を深めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の主な研究目的は、今後の円滑な研究のための基盤づくりを行うことであった。そのため、日本・韓国・台湾(中国)の最近の研究動向を把握しつつ、先行研究および1次・2次資料等の様々な資料を集め、「従軍慰安婦」表象史の構築に取り組んだ。 日本と韓国の場合は現在のところ、予定通りに研究が進んでおり、本格的なテクスト分析作業のための環境が整いつつある。その意味ではおおむね順調に進展しているといえる。それに比べて台湾(中国)の場合は資料収集等における様々な制約により、特に1次資料を中心に全体的に後れを取っている。これは今後の円滑な研究推進のために改善していくべき課題であることから、現在までの進捗状況はやや遅れと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、国内外の研究者らとの連携を図りながら情報並びに資料を収集するとともに、今年度の研究成果を踏まえて具体的かつ詳細なテクスト分析を行うことが主な研究内容となる。具体的には、従来の「従軍慰安婦」をめぐる表象研究を批判的に継承しつつ、現在日本・韓国・台湾(中国)それぞれの国で社会科学分野を中心に個別に論じられがちな慰安婦問題を、東アジアの文化空間における文化的記憶から再考し、東アジアの「従軍慰安婦」イメージと文化的記憶の(再-)構築や変容の諸相を立体的に捉えていく予定である。また、分析結果は論文としてまとめて公表することにより、社会的還元を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は海外出張の日程によるものである。今年度は予定通りに海外(韓国)への出張を2回行ったが、そのうち2回目の出張が年度をまたがっていた。そのため、旅費に関する予算の執行が年度内に行われず、次年度使用額が生じる結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように、次年度使用額が生のじたのはあくまで出張の日程による予算執行の手続き上の問題からである。そのため、実際に発生した次年度使用額はさほど多くなく、予算はほぼ計画通りの使用となっている。よって今後の使用計画について特に検討する必要はないと考えるが、とりあえず旅費を除いた差額については必要に応じて資料購入費等に充てる予定である。
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