研究課題/領域番号 |
16K02061
|
研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
岸本 香織 大手前大学, 付置研究所, 客員研究員 (40440903)
|
研究分担者 |
青谷 美羽 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (10578719)
岡 佳子 大手前大学, 総合文化学部, 教授 (50278769)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 尼門跡寺院 / 比丘尼御所 / 尼僧 / 尼寺 / 触留 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ジェンダー研究及び社会史・宗教史の重要な資料ともなる尼門跡寺院の資料調査・分析を通して、尼門跡の支持者と一般尼寺との比較という点を中心に、近世・近代における尼僧の社会活動を明確にすることである。 平成28年度は、光照院調査を2回(9月10~11日及び2月4~6日)計5日間行った。1回目の調査では書画類の整理・再調査を行い、新たに書画31点について調書を作成、撮影し、データ入力をした。また、今後の文書調査のための準備調査も行った。2回目の調査では、新出文書や聖教類のについて調査書約50点を作成、日記9冊分717コマの撮影を行った。まとまった聖教類が伝存する尼門跡寺院はこれまで調査した中にはなく、これらは近世における女性の宗教的在り方を示す貴重な資料となる。 また尼寺文書研究会を9回(5月8日・6月5日・7月3日・8月6日・10月10日・11月13日・12月11日・1月22日・3月12日)開催した。慈受院蔵「総持院触留」は、朝廷・幕府から武家伝奏を通じて比丘尼御所に発給された触等を書き留めたものであり、尼門跡寺院では類例がない貴重な資料である。研究会では、触留帳の延享5年(1748)から宝暦3年(1753)の6冊分の翻刻を終えた。当該期には、寛延3年(1750)の桜町院崩御に際する院号定や法事に関する触が含まれ、上皇崩御時の様子をうかがえる好資料となる。この件に関連して記された般舟院の絵図も貴重な資料と言える。 上記を踏まえた「比丘尼御所支持者の研究」及び「一般尼寺との比較研究」の個別研究に関しては、各自が研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尼門跡寺院調査のための事前調査において、光照院文書の調査・撮影が急がれる状況であると判断したため、当初予定していた霊鑑寺日記の撮影及び新たな尼寺の調査を保留とし、光照院文書調査を優先的に進めることとした。日記は研究期間中に約40冊6000コマ分の撮影を予定し、新出の文書及び過去に未調査のままとされた聖教類の調査を完了させることとした。本年度においては、日記は状態のあまり良くないものを含みながらも約700コマの撮影を終え、調査書作成も50点と、おおむね順調である。 慈受院蔵「総持院触留」の翻刻についても、予定通り6冊の翻刻を行い、順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度からに引き続き、光照院文書調査を行う。平成29・30年度にそれぞれ3日間程度を年2回、平成31年度は年1回を予定している。文書については1回に50点程の調査書を作成する。日記の撮影については、1回あたり1000コマ前後の撮影を進める予定である。 また慈受院蔵「総持院触留」の翻刻については、今後も予定通り、平成29・30年度にそれぞれ6冊、平成31年度前半に2冊の翻刻を行い、平成31年度後半には編集作業を行って、報告書としてまとめる予定である。 「比丘尼御所支持者の研究」「一般尼寺との比較研究」に関する各自の研究課題は、個々に研究を深化し、最終年度には報告書にまとめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた撮影用品の購入等について手配時期がずれ込み、年度が改まってしまったため、残額が生じたかたちになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
現在既に必要品の購入等は進めているため、研究への支障はなく、基本的な使用計画に変更はない。 次年度は主に、資料調査及び寺院調査や研究会参加の旅費、これら研究推進のために必要な消耗品等物品購入費、研究会作業及び調査データ・撮影写真整理作業の謝金、研究会会場費として使用を予定している。
|