本研究の目的は、日本のアニメ作品が海外の観光地形成に与えた影響を以下の二点から明らかにすることにある。すなわち、日本のアニメ作品が日本人の海外旅行動機の形成にどのような影響を与えたのか、そしてこうした作品は旅行目的地形成にどのような影響を与えたのか、の二点である。 これらの目的に基づき、一年目には、まず、これまで日本のアニメ作品が海外の観光地形成に与えた事例について、日本人の海外旅行動機形成の観点から整理を行い、こうした観光地が大きく2つに分類できることを示した。すなわち、第一に、クリエイター型(クリエイター・製作者が実在の場所をモデル地として設定したり、実際にロケハンを実施したりすることが、結果として観光地形成につながる場合)。第二に、ファン・イマジネーション型(作品とは全く関連しない場所において、作品関連のイベントが開催されたり、ファン自身が作品との結び付けを行ったりすることが、観光地形成につながる場合)、である。 二年目は、こうした2つのタイプの観光地のうち、クリエイター型のものに着目し、日本アニメ史におけるロケハンの歴史を文献資料調査ならびにアニメーション製作関係者へのヒアリング調査を通して把握した。その結果、『アルプスの少女ハイジ』(1974年TV放送)の制作時におけるロケハンが、その後の日本のアニメにおけるロケハン文化を方向付けたことが明らかになった。 そして最終年においては、これら2つのタイプの典型事例の実地調査を行うことで、アニメ作品が旅行目的地形成に与えた影響を実証的に明らかにした。具体的には、前者の例として、『アルプスの少女ハイジ』『フランダースの犬』『赤毛のアン』のロケ地を、後者の例としてファンの間で『魔女の宅急便』『千と千尋の神隠し』と関連付けられて消費されている観光地を取り上げ、アニメイメージや物語世界の受容実態、国際観光地化の経緯と実態を明らかにした。
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