小規模島嶼とその関連地域を対象に、実質的にジオツーリズムが展開されている地域のイノベーションと観光学の果たすべき役割について、実証的研究にあたった。研究手法としては、文献調査(先行研究や新聞記事等の資料収集と分析)、島民や観光客及び関連地域の自治体を対象とした聞き取り調査(インタビュー調査、質問紙調査)である。 1.小規模島嶼とその関連地域を対象としたジオツーリズム推進のための基盤的認識の把握 2015年に「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の1つとして世界遺産登録された端島(通称:軍艦島、長崎市)、且つ、2016年4月に成立・公布の国境離島新法における対象島嶼から構成される五島列島ジオパーク構想(長崎県五島市)、島嶼で唯一ユネスコエコパーク認定を受けている世界遺産・屋久島(鹿児島県)、国境島嶼のうち、韓国が国内ジオパークに認定したとされる竹島(島根県隠岐の島町)を主対象として、地域資源を活かしたジオツーリズムや、その前提となる小規模島嶼の価値意識の把握を試みた。結果、ジオツーリズムの推進には島嶼のもつ固有性・地域的完結性の事前認識の必然性が明らかになった。 2.小規模島嶼とその関連地域を対象としたジオツーリズムの動態的展開過程の把握 ジオツーリズムは、エコツーリズムや世界遺産における観光現象も包含する意味合いを有している。この観点から、端島のほか、2018年に世界遺産登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産の位置する五島列島や平戸島、黒島(佐世保市)等を事例として、ジオツーリズムと世界遺産登録により生じる観光現象との関わりについて、地域イノベーションの視点から検討を加えた。結果、地域イノベーションの伸長には観光の持続可能性への指向が不可欠な要素であることが分かった。 それらの成果は、日本観光研究学会、進化経済学会、経済地理学会、全国地理教育学会等で発表した。
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