研究課題/領域番号 |
16K02074
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
神谷 大介 琉球大学, 工学部, 准教授 (30363659)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 津波 / 観光危機管理 |
研究実績の概要 |
今年度は沖縄本島における津波災害発生時の危険度について,沖縄県民と観光客の重なり合いという視点から評価を行った.これは県民の方が災害危険場所や避難場所等を認知している可能性が高く,一方地理的不案内な観光客は避難が困難であろうということを前提に,観光客だけになる場所や時間帯を明確にするとともに津波浸水区域との重ね合わせによる評価を行った.具体的には,携帯電話に関するデータを用いてメッシュごとの時間帯別重なり合いを分析した.この時,基地内や山間部は除いている.また,県民・観光客の分布と土地利用との関係について整理を行った. これらの分析結果をニッチ重なり合い指標を用いて評価した.この結果,昼間と夜間において重なり合いに大きな差が出るメッシュ,観光客が卓越しているメッシュ等を明らかにした.これらの内,ホテル等のプライベートビーチなどではホテル事業者が避難支援を行う可能性があるが,その他の住宅地から離れた景勝地などにおいては,種々のサイン等を用いた災害情報および避難に関する情報伝達の仕組みを検討する必要性が示された.さらに,他の事業と連携し,観光客への移動支援情報に災害時の避難情報や公共交通運航再開情報を伝達する手段についても社会実験を行った. 一般には多くの観光客がいる場所において,観光危機管理の対応が求められるが,それ以外にも危険な箇所があることが示された.また,県民がほとんどいないような場所においては,多機能型電灯などと防災行政無線を組み合わせることによる案内の必要性および設置可能性が示された. つまり,災害に対するハザードおよびエクスポージャを示し,危機回避のための社会動態を考慮するとともに,リスク軽減のための計画代替案の作成まで行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
津波災害に対する観光事業者へのヒアリングおよび市町村観光担当部局へのヒアリングを実施した.その上で,観光客が求める情報や伝えるべき情報が明らかになっている.また,時空間別の観光客の分布と県民の分布を明らかにし,ニッチ分析を行うことにより,時空間的危険度を明らかにしている. これらの情報は観光危機管理のハザードおよびエクスポージャを表現するものであり,観光危機管理における基本的かつ重要な情報である.これまでの観光危機管理計画ではこのことをあまり考慮されていない.これを考慮することが本研究の特徴であり,また,観光地で生活する人々を巻き込んだリスクマネジメントを検討することに,災害から見た観光地域社会の持続可能性が表現できるものと考えている. 次のステップとなる計画代替案の作成についても,その一部を既に実行しており,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまで整理・分析を行った結果を基に,計画代替案の評価を行う予定である.これは災害時だけ使えるシステムではなく,平時には観光客の移動支援として機能し,災害時には避難行動支援や公共交通等の運航再開情報を提供するシステムを考えている. また,キャリア関係事業者とも連携し,さらに観光流動を把握するための手法および分析の精緻化を試みる.観光客とのコミュニケーションツールを有していることが,災害情報・防災情報・復旧・復興情報を伝えるために重要であり,そのためのツールは平時から(観光時から)使われている必要がある.このことを念頭に,既にキャリア事業者との連携を開始しており,その実行可能性について検討することとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
他の研究と合わせて実施することが出来た出張等があったため,予算が残った.
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