インドネシア後発地域における観光ファミリービジネスのスタートアップ課題と支援戦略

2017 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 16K02075
• 研究機関: 琉球大学
• 研究代表者: 桑原 浩 琉球大学, 観光産業科学部, 教授 (90468067)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: プロプアツーリズム / ホームステイ / 南東スラウェシ州

研究実績の概要

本研究はプロプアツーリズムの観点から、インドネシアの一貧困地域を調査対象地とし、世帯経営による民泊型宿泊サービス事業のスタートアップ期における非ファイナンス分野の課題を広く探索したうえで、外部支援者の関与が特に必要とされる分野を示すことを目的としている。
研究2年目にあたる２０１７年度においては、ワカトビ諸島における調査対象者となりうるホームステイ起業意向者の分布を確認する現地調査と、当該観光地域の観光専門家（観光を専門分野とする大学教員）へのフォーカスグループインタビュー実施に向けて、研究協力者（スラウェシ島マカッサル市内の大学に勤務する大学教員）との協議を行った。また、関連文献調査を継続して行った。
ワカトビ県における開発関係の政府責任者へのヒヤリング、さらには現地NGO関係者へのヒヤリングの結果、ワカトビ諸島の現状において、ホームステイ事業への関心、認識のある個人および世帯は、地理的に極めて分散しており、特定の集落に偏在していないという実態を確認した。そのため、当初予定していた集落を限定したうえでの世帯調査を再考することとした。調査対象地域を当初予定していたワンギワンギ島に加えて、新たにカレドゥパ島を加えることとし、実際に同島を訪問し、ホームステイ事業のスタートアップ期にある世帯を確認した。
専門家フォーカスグループインタビューの実施に関しては、研究協力者との協議の結果、インタビュートッピクスの概要、インタビュー対象者のリクルーティング、インタビュー言語、実施場所、調査時期に関して、合意することができた。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2017年度内に、ホームステイ起業関心世帯のスクリーニング調査、さらに、起業関心世帯への面接予備調査、起業関心世帯面接のための質問項目リストの作成までを行う計画であった。しかし、実際には、調査対象世帯のスクリーニング調査の実施までにとどまった。その理由は以下のとおりである。
研究計画当初時には、ホームステイに関する起業関心者がすでに現れていたために、その後も堅調に増加することを予想していた。しかし、実際の状況を地元関係者に聴取してみた結果、ホームステイ起業関心者は増加してはいるものの、特定の集落で関心が高まるような事態にはなっておらず、各集落に数件が想定できるだけで、極めて地理的に分散していることが確かめられた。そのため、サンプル数、質問内容を含めた起業関心世帯調査の計画の再検討が必要となった。また、大学業務との調整が十分に捗らず、予定していた2回の現地調査を1回にとどめざるを得なかったことも研究が遅れている理由である。
なお、スラウェシ島在住の観光専門家へのフォーカスグループインタビュー調査に関しては、実施に向けて、現地の研究協力者との間で、具体的な作業に関する調整を行うことができた。

今後の研究の推進方策

起業関心世帯へ面接調査に関して、ホームステイ起業関心世帯の地理的な分散状態を考慮して、対象集落を増やす一方で、1集落1～2世帯での調査を実施することとした。また、各集落への面接調査項目の範囲を拡大して、1世帯当たりの情報量の増加を図る予定である。
スラウェシ島在住の観光専門家グループへのフォーカスグループインタビューに関しては、インタビュー項目の確定とインタビューの実施を予定している。また、初回インタビューの結果を受けて、状況に応じたフォローアップインタビューも実施可能なスケジューリングを行う。さらに文献調査は継続して行う。

次年度使用額が生じた理由

当初の研究計画では2017年度に2回の現地訪問調査を予定していたが、研究計画の変更と大学業務との調整困難により、1回のみ実施した。そのため、1回分の旅費、謝金、物品費等が差額として発生し、結果として次年度使用額が生じた。2018年度においては、ホームステイ起業意向者調査を２回、さらにスラウェシ島での専門家フォーカスグループインタビュー調査を予定しており、次年度使用額ををそれら経費に充当する見込みである。