研究課題/領域番号 |
16K02076
|
研究機関 | 奈良県立大学 |
研究代表者 |
津田 康英 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (10275349)
|
研究分担者 |
麻生 憲一 立教大学, 観光学部, 教授 (90248633)
角本 伸晃 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (20214421)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 土産品 / 地域振興 / 観光経済 / 地域経済 / 観光振興 / 観光消費 / 観光動線 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究は、①事前研究、②現地調査、③事後研究の3項目で構成されている。①事前研究では土産品を巡る状況を把握するために商業統計を精査し、空港やサービスエリアの売店における各種資料からランキング・データを追加したうえで、売り手側のデータベースを構築した。買い手側の数量データに関しては各自治体が公表している各種観光統計資料を活用した。また、書誌検索等を活用して調査事例データの収集にも努めた。次に、②現地調査では、既に著名な土産品を販売している観光関連事業者や各種地域団体から聞き取り調査を行った。まず調査地として、東日本大震災の落ち込みから入込観光客が回復傾向にある房総半島において、観光客の土産品購入に関する観察調査を行い、中心的存在である道の駅「とみうら」の関係者に対して最近の消費動向の聞き取り調査を行った。また、式年遷宮以後の落ち込みから緩やかな回復傾向にある伊勢神宮周辺においては、観光動線の態様と観光消費について現地調査を行った。平成25年から年平均1割増の観光入込客がみられる沖縄地域において、土産品店の分布や地域産品の土産品化の状況に関して現地調査を行った。そして、事後研究では、調査データを整備したうえで、発表可能なものから学会及び研究会で報告を行った。観光経済経営研究会では、「地域振興政策における道の駅への期待-重点モデル選定『とみうら』の取組を中心に-」と題して報告を行い、分担者との共同報告としては日本観光学会において「『道の駅』設置と農家世帯への経済的効果‐パネルデータ分析にもとづいて‐」、と題して報告を行った。代表者は、奈良県香芝市の地域産品(土産品等)について調査を行い、報告書にまとめている。また、分担者は、地域の土産品開発に取り組む京都府宇治田原町において調査を実施し、観光まちづくり会議で講演を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究目的は、観光関連の統計資料を精査して、それをデータベース化することであり、同時に著名な観光地において土産品を巡る現状を把握するための現地調査を行うことであった。今回、数年ぶりに更新された商業統計をはじめとして各種統計資料からデータを収集し、現地調査に必要な基礎的データベースを構築することができた。また、観光入込客数が東日本大震災の落ち込みから回復傾向にある房総半島、式年遷宮以後の減少から緩やかな回復傾向にある伊勢神宮周辺、4年連続で毎年平均約1割増を達成している沖縄地域において、土産品店の分布や地域産品の土産品化などの観光消費に関する売り手側の状況と観光動線の態様などの買い手側の状況に関して現地での聞き取り調査及び観察調査によって地域ごとの特徴を把握した。これと対比する目的で、埼玉県西部、福岡県北部、和歌山県西部などの観光スポットへ赴き土産品販売の取り組みに関する観察調査を行った。その意味において、初年度の研究目的の大半は達成できたものと考える。今回の研究成果の一部は既に分担者との共著で報告しているが引続き、学会や研究会等で報告していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、当初の研究計画に沿って新たな土産品を生み出し、周辺地域からの観光客を集めている地域への現地調査を行う予定である。境港市水木しげるロード振興会では、地域振興策によるコミュニティ道路の整備を契機としてキャラクターを用いた商品開発を行っているが、これは「水木しげるロード」整備以前にはなかった取り組みである。また八戸では、地域で広く食べられていた郷土料理「せんべい汁」をB級グルメ化し土産品へと転化させていった。観光客向けの土産と飲食が相互に連動性・補完性を持ち始めた事例として注目されている。その他には初年度で時間調整が叶わなかった観光地への現地調査を補足的に行う。2年目の研究計画も初年度と同じプロセスで進めていく。事前研究では現地調査地域のデータと資料収集、聞き取り調査のコーディネート、新たな試みを始めた地域のデータと資料収集を行う。現地調査では初年度同様、観光関連事業者と地域団体で聞き取り調査を行う。事後研究では可能な限り長期間のデータベースを構築する作業を行う。2年目のデータを整備する段階では研究メンバーと統計資料を精査し、統計的分析を通して地域特性を明示できるようにし、準備ができたものから成果を研究会・学会等で発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
分担者の一人が平成28年度当初に不測の怪我に見舞われ、歩行が不自由な状態になったため共同で実施予定していた現地調査を見合わせ、代表者が単独で現地調査を行った。また、当該年度から分担者は首都圏の大学に所属を移しており、効率化のために代表者が現地調査の報告等の研究打ち合わせに分担者の所属大学へ赴いたため主として旅費は代表者が執行した。
|
次年度使用額の使用計画 |
分担者の怪我は順調に回復しており、本年度は8~9月に八戸・境港への共同調査を実施する予定である。また随時、分担者との研究打合せ、研究会・学会での報告も実施していく予定で、旅費を中心に執行を予定している。
|