研究実績の概要 |
本研究では、観光危機管理のあり方と観光復興のあり方について検討を行った。 観光危機管理のあり方は、国内で唯一「観光危機管理基本計画」を策定している沖縄県の実態を対象に策定の経緯や取り組み体制、県の基本計画を受けて策定されつつある市町村の観光危機管理計画等を調べ、その課題や成果を検証した。各市町村の取り組みや観光危機管理に大きな役割を担う沖縄コンベンションビューローの具体的な活動内容等を明らかにすることができた。 観光復興のあり方については、ハード面の整備のあり方として、宮城県と仙台市が津波被災跡地へ観光事業を誘致する補助金事業や用地提供事業から、行政主導の誘致事業の意義と観光コンテンツの変化について考察した。集団移転跡地の無償貸与で集客交流事業を募ったところ、県内外の事業者の活発な参入と迅速な事業開始が見られたことが確認でき、宮城県内の行政主導による被災地への観光関連事業の誘致は有効であることが示唆された。ソフト面の取り組みとして、東日本大震災以降被災地で生まれたボランティアを中心とした交流の継続性をどう担保するかについて、ボランティアもしくは震災からの学びのプログラムに参加した東北圏以外の住民を対象に実施したアンケート調査および再訪率が高かった福島県いわき市の取り組みから検討した。その結果、20代は,ボランティア活動に積極的であり,活動内容も地域に深く入り込む内容を好む傾向がみられた。20代の人たちが地域コミュニティに入ってきてもらう「場」を初期の段階から積極的に用意すること、再訪の障壁となる金銭面での支援が必要であることを指摘した。その他、「つながり」を大切にし,継続していくこと、「時間的変化」と「今」を丁寧に見せることの重要性が示唆された。 以上、震災に強い観光振興のあり方として、危機管理、観光復興のあり方としてのハード面、ソフト面からの示唆を精査することができた。
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