研究課題/領域番号 |
16K02083
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
田中 伸彦 東海大学, 観光学部, 教授 (70353761)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 観光計画 / デスティネーションマネジメント / ニュージーランド / 国立公園 / 自然地域 / 観光教育 / ネルソン / DMF |
研究実績の概要 |
本調査は、自然環境の保全を前提に、経営学的戦略論・組織論やマーケティングを組み込んだ新たな観光管理手法を調査・評価することが目的である。対象はニュージーランド(NZ)の「DMF (Destination Management Framework)」である。 今年度は、導入後約5年が経過した時点におけるDMFの運用実態の現状を資料調査及びインタビュー調査で把握した。具体的には、保全省(DOC)地域事務所・ビジターセンターやオークランドの観光協会(Tourism New Zealand)等を対象に、NZ国内におけるDMFの適用状況のインタビュー調査を行い、資料を収集した。特にネルソンにおいては、公的/民間セクターの事業所などに順次来訪して、地域スケールにおけるDMFの認知度と対応実態の概要を把握した。その結果、民間セクター等においては、DMF自体の直接認知度は必ずしも高くないという状況が明らかになった。その一方で、直接認知していなくともDMFの方向性に沿った戦略的観光管理が現地では行われているという実態が明らかとなった。 その様な状況を念頭おいた上で、次に「国立公園レンジャー育成カリキュラム」や「自然ガイド養成カリキュラム」を持つ高等教育における人材育成の実態の調査を行った。具体的には、クライストチャーチ近郊のリンカーン大学、オークランド市内にあるオークランド工科大学(AUT)、ネルソンに立地するNMITを対象に、人材育成高等教育の現状や、DMFとの関係をインタビュー調査した。その結果、NZではNZQAという教育認証機関における教育の質保証が厳格に行われていることが明らかとなり、国立公園の管理人材は大学においてマネジメント人材、ポリテクニーク等(IPTs)においてオペレーショナル人材をシステマティックに育成している実態が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度に予定していた「包括調査」、「現地調査と文献解析に基づくDMF戦略の実態分析」、「人的資源管理戦略の評価」については、概ね順調に調査を遂行できたと考えている。 なお、「人的資源管理戦略の評価」については、クライストチャーチ近郊のリンカーン大学やオークランドのAUTなど、当初予定していなかった複数の教育機関に対するインタビューが行え、特にAUTにおいて今年度からスタートしたデスティネーション・マネジメント課程の調査が行えるなどの予想以上の収穫があった。一方で、旅程の関係でウエリントンにおけるDOCへのインタビュー調査は翌年度に繰り越すことにした。なお、ウエリントンのDOCで守株しようとしていた情報等は、ネルソンにおけるDOC地域事務所におけるインタビュー調査と既存文献の入手で28年度中に必要な情報はフォローできているので、ウエリントンの調査を翌年度にまわした状況であっても研究の進捗に大きな影響は出ない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究展開は以下のとおり考えている。 【公的セクター組織論】ネルソンのDOC地域事務所、地域観光協会などの公的機関を対象とした経営組織論に関する調査を行う。国立公園をはじめとする自然地域の管理や観光に対応するための人員や配置、運用効果等、組織経営に関わる実態と課題をインタビュー調査で解明し、マーケティング等の経営学的観点からDMFがどの様に対応、運用されているのかを解明する。29年度に中心的に行う予定である。 【民間セクター組織論】エイベル・タスマン国立公園など3箇所の国立公園においてコンセッション(利用許可)を得ているLand Of Clouds社などの民間旅行業者やガイド業者を対象に、DMFの浸透度や地域経済に与える正負の影響などに関するインタビュー調査を行い、民間セクターの国立公園管理における経営組織の実態を解明し、評価する。29年度に中心的に行う予定である。 【DMF運用効果の解明と評価】 DMFの運営管理的側面の評価を行い、「DMOの早期育成」という、現在我が国で急務とされている社会的要請に対応する知見を明らかにする。30年度に中心的に行う予定である。 【成果の取りまとめ】研究成果を成果報告書等に取りまとめる。30年度に中心的に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年2月から3月にかけて実施したニュージーランドにおける海外調査におけるレンタカー借上費、ガソリン費、資料購入費、専門的知識の提供費などの支払について、為替の変動を念頭において限度額をオーバーしないように使用したところ、最終的に24,853の残額が残ることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
残額については29年度に行うニュージーランドにおける海外調査におけるレンタカー借上費、ガソリン費、資料購入費、専門的知識の提供費などの支払に使用する。
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