クリエイティブツーリズムとは「他に代えがたい体験や創造的な協働によりツーリストと地域住民とが新たな価値を創造し共有することにより、地域の持続的発展をもたらす新たなツーリズム」であり、文化消費型のカルチャーツーリズムを超えるものであり、サスティナブルツーリズムが主に自然環境を重視したものであるのに対して都市の芸術文化の創造性を重視している。ユネスコは2004年以来、グローバル化の中で文化の画一化に抗して文化多様を推進する立場から創造都市の世界的連携を提唱してきたが、クリエイティブツーリズムによって創造都市相互の連携を強めるように働きかけてきた。そこで、2016~2019年のユネスコ創造都市ネットワーク総会に参加するとともに、その提唱者である米国のサンタフェやカナダのモントリオール、イタリアのボローニャおよび、日本の金沢、神戸、丹波篠山などとの連携についてクリエイティブツーリズムとの相互連関的発展について調査分析を行った。最終年度にはイタリアのファブリアーノで開催されたユネスコネットワーク総会に参加するとともにボローニャで現地調査を行った。創造都市における1)芸術文化コンテンツの創造者(アーティスト等)やアートNPOによる創造刺激型交流、2)創造性が発揮されやすい流通機構や市場の形成に向けた創造的政策交流、3)さらには伝統文化や伝統芸能を世界市場で競争力ある創造的文化産業に転化する上での革新的な技法や創造的技能交流の3つのレベルを推進する組織のあり方を検討する。同時に、4)創造都市が成長を志向して互いに過当競争する事態を避け、相互に共生的互恵的に発展するための連携やネットワークを進める上で不可欠な市民相互の経験交流、また、5)都市周辺の農村を巻き込んだ創造的都市農村連携に分析の焦点を置き、以上を推進する主体の在り方、予算・政策面の工夫などを分析し、政策提言にまとめた。
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