本研究の目的は、観光資源を利用したリハビリテーションをパーキンソン病(Parkinson's disease;以下PD)の人に実施し、心身の健康や生活の質(Quality of life;以下QOL)の維持・向上に対する効果について、科学的根拠を提示することである。 研究期間の最終年度となる令和5年度は、先行研究である「観光資源を利用したパーキンソン病の人のリハビリテーション効果についての研究」の頃より蓄積してきた京都の観光資源に関するデーターを、PDの人のリハビリテーション手段としての利用のみならず、ユニバーサルツーリズムとして、子どもから高齢者、外国人にも広く利用できる情報として研究成果を公開するため、観光資源を管理する施設の協力を得て情報の整理と再調査をおこなった。 京都の名所・旧跡地の拝観経路を示す地図の作成には、図記号(ピクトグラム)で表現したユニバーサルデザイン地図を作成して、一般の人にも閲覧・活用できる内容を公開するため、ウェブサイトを通して情報公開をおこなった。 研究期間全体を通して実施した研究成果は、観光資源をリハビリテーションとして利用するには、PDの人の場合には、事前に心身機能を把握した後に、ご本人が訪問を希望する観光資源の環境要素(バリアフリー設備、トイレ様式、休憩場所など)について把握し、その情報を報告した後に、PDの人自身が訪問先を決定することが重要であること。このような当事者主体の実施計画は、訪問前から、病気との付き合い方や健康管理を意識することにつながり、日常生活では定期的に歩く、家族との外出や会話が増えるといった変化が見られた。また、観光資源の活用後、抑うつ気分の軽減や日常生活に変化が認められ、旅行計画や実行といったQOLの維持・向上につながった。
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